ほんものはどっちだ

2013年の大晦日は、さすがに仕事もなかったので

一人、テレビを観て過ごした。

 

紅白では、泉谷しげるが暴れていたな。

リハーサルからブチ切れていたみたいだけど、

本番でも「手拍子してんじゃねえ!」と悪態ついて、最後はギター投げて。

前歯もなかったしな。

 

最初は「やりたい放題だな!」と思って笑いながら観ていたんだけど、

「テレビやラジオの向こうで、一人寂しく過ごしている奴らに歌いたい」

というメッセージは、ちゃんと伝わってきて、俺はかなり感動した。

 

一方で、すごく対照的だなあと思ったのは、

別の局でやっていたスポーツ特番の、「清原氏 難病の母に贈る一発」とかいうやつだ。

病気の母親のために、清原がかつての凄腕ピッチャーから、最後のホームランを打つ…

という企画モノだったんだけど、俺は観ていて居心地の悪さを感じたぜ。

 

親孝行することにケチをつけたいわけではないし、

俺にはそんなことに文句を言う筋合いはない。

 

だけど、清原といえば、見てくれも振る舞いも思いっきり荒くれ者で通してきたわけだし、

むしろそれをウリにして、放言を重ねてきたような男だ。

そんな男がテレビの前で「お母さんのために…」とか言っているのを見たら、

「何を今さら、小さいことを言っているんだろう?」としか思えず、

茶番にしか見えなかった。

 

何度も言うけど、母親を思う気持ちにケチをつけたいわけじゃない。

だけど、親孝行は、テレビの企画じゃなくてもできるだろ?

自分でバッティングセンターでも連れて行って、ホームランかっ飛ばして見せたら、

それだって親は喜んだと思うぜ。

 

それとももしかして昨日の番組は、

清原が今後、入れ墨を消して、スーツを着て、腰も低くなって、

真面目に野球の仕事をする男になります、と路線変更するための布石だったのだろうか。

それなら辻褄も合うんだけどな。

 

俺が気持ち悪く思うのは、この辻褄の合わなさに目をつぶって、

美談に仕立てあげようとするテレビ局の安易なやり方と、

それに簡単に乗ってしまう視聴者がいることだ。

 

ネットなんかで感想を見る限りでは、

暴れまくった泉谷しげるには批難が集まり、

清原の親孝行には、涙した視聴者が多かったようだ。

 

本質を見たときには、いったいどちらのメッセージのほうが、

優しくて、ふところ深いものだっただろう?

それを見分けられない人が増えているような気がして、

俺は不気味でならない。