そんなに都合よくはいきませんよ

子供が問題を起こしている、そんな家族(親)にありがちなのは、

「すべてを自分たち(親)の都合よくやっていきたい」

という、どうしようもない願望だ。

 

それは、俺なんかのところに相談にくる親にも顕著である。

 

もちろん一応の体裁は整えてくるのだが、相談の最初っから、

「うちの子供の面倒、みてくれるんでしょう?」

「おたくが全部、ひっかぶってくれるんでしょう?」

という、他人任せの雰囲気をぷんぷん匂わせてくる。

俺が解決策を提示しても、それを理解しようとするのではなく、

あくまでも、自分たちの都合のいいように、俺を動かすことばかり考えている。

 

もちろん俺は、困っている家族を助けるために、この仕事をしている。

だけどそれは、家族の言いなりになることとイコールではない。

 

そもそも、親ですらお手上げになるほどの問題を抱えた子供である。

いよいよになって他人任せにしたところで、

親の思う通り、都合のいいように収まるわけがないのである。

 

俺から言わせれば、そういう子供を作り上げたのは親であり、

10年20年と問題を放置してきたのもまた、親である。

あるいは親の都合で犯罪を隠蔽したり、心の病気に仕立て上げたり、

そういうケースもないわけではない。

 

それがいよいよ手に余るようになると、

俺みたいなところに丸投げしようとやってくるわけだ。

 

だから俺がやっている業務というのは、

親と一緒に動くことで、現実を一つ一つ突きつけ、

子供はどこまでいっても、あなたたちにとって都合のいいようにはなりませんよ、

という事実を、知らしめることから始まる。

 

それをやらないと、親はいつまでも子供に対して幻想を抱く。

「うちの子はやればできるんです」「本当はこういう子なんです」みたいな、

しょせんは親の願望でしかない子供像を、いつまでも手放さない。

 

俺は、ガチンコなやり方で、その幻想を崩していく。

当然、嫌がったり、腹をたてたりする親もいる。

だけど、子供も交えて何度もぶつかっていくうちに、

「私たちの育て方の、ここがいけなかったんだなあ…」なんて

素直な心情を吐露してくれるようになる親も、いる。

 

そういう瞬間があると、俺もまた頑張ろうと思える。

親が子供と、真剣に向き合いはじめたと思えるからだ。