日曜日の夕方、自転車で

日曜日の夕方、俺は、押し入れにしまい込んでいた

折りたたみ式の自転車を引っ張り出した。

 

この自転車は十年近く前に買ったものだが、

ドイツ製のけっこういいやつで、20万円くらいした記憶がある。

 

最近の俺の足はクルマばかりで、自転車には乗っていなかった。

空気も抜けていたので、近所の自転車屋で整備をしてもらったところ、

二千円でバッチリ、乗れるようになった。

 

俺は短パンとTシャツ姿で、夜の新宿を小一時間ほど走った。

 

しかしなぜ突然、押し入れの自転車を引っ張り出したかと言うと、

日本ダービーにひっかかって負けてしまったからだ。

 

競馬はここ最近、やっていなかったのだが、

この間、週刊新潮を読んでいたら、

「ボケ防止・長生きの秘訣」という記事に、「酒・ギャンブル○」とあった。

ドバッーとドーパミンが脳に出るのが良いとか何とか、

そんなことが書いてあるのを読んで、

「そういや、今週はダービーだったなあ」と、

俺の脳みそにドバッーとドーパミンが出てしまったのである。

 

結果は負けだった。

大金こそスッていないが、金をドブに捨てたようなものである。

落ち込んだ。

負けたことはもちろんだが、週刊誌の記事なんかにひっかかり、

いそいそと予想して馬券まで買った自分が情けない。

まったく自己コントロールができていないではないか!!

 

そういえば、ASKAのシャブ騒動について、

夕方の報道番組に出ていた法政大学の島田とかいう物書きが

「曲が作れなくてシャブをやるくらいなら、

家で寝ていたほうが良かったんではないか」

というようなコメントをしていた。

まさに俺こそ

「競馬で負けるくらいなら、

家で寝ていたほうが良かったんではないか」

である。

 

そんなわけで、己の雑念を振り払うべく俺は、

自転車コキコキ、新宿の街を走った。

猛暑続きとは言え、夜の風はそれなりに涼しく、

ささやかな幸せを感じた。

 

やはりお金は、まっとうに仕事をして得るものなのだ。