大いなる精神、大いなる忍耐

この間、俺の知人から聞いた話なのだが、

彼の経営する会社の従業員の中に、ひどい妄想を抱き、

たとえば「会社の○○に弁当の中に毒を入れられた」というような発言を、

繰り返している人物がいるという。

 

その従業員の背景をざっくり言ってしまえば、

ようするに親の愛情を受けずに育ってきている。

 

彼に対して、俺の知人が経営者として、どのように対応しているかと言えば、

「とにかく話を聞いてやる」そうなのだ。

 

本人の妄想からくる話を聞いてやり、危ない発言があったときには、

「そういう話は、俺のところだけでしろよ」

「ほかの奴にそんなことを言ったらいかんよ。

会社の皆から “辞めてくれ”と言われるかもしれないし、

クビになるようなことになったら、お前も困るだろう」

と諭してやると、本人も納得するのだという。

 

俺は知人に、いったいどのくらいの時間、その従業員の話を聞いてあげるのですか? と尋ねた。

その答えは、「一回3時間、週に3回くらい」というものだった。

それをもうかれこれ7、8年続けていると言うのだ。

 

俺は感心を通り越して、感服した。

 

「徹底して話を聞く」というやり方で、

従業員が問題行動を起こさないよう、導いているのである。

 

ある意味、超裏技的な対処法、治療法と言ってもいいかもしれない。

精神科医療に携わる専門家でも、ここまでできるひとは滅多にいないだろう。

 

親にしたって、我が子の他愛ない話を、毎日、何時間も聞いている!

と胸を張れる親が、どれくらいいるだろうか。

 

昨日のNHK特集じゃないが、

大いなる精神、大いなる忍耐こそが、ひとを育て、ひとを救うのだ。