成長から成熟の社会へ③

 

前から言っていることだけど、俺は本当に同世代の人間から

やたらと嫌われるんだよな。

 

たとえば、珍しい職種のせいか、テレビや出版などマスコミ業界の方から

「一緒に仕事をしましょう」と声がかかることも、ないわけではないのだけど、

そうすると、その会社にいる俺と同じ40代の奴らがすっとんできて、

「押川はあぶねー奴だ」「ネットで検索したら批判がいっぱい出てくる」

「昔、週刊文春に叩かれたことがある」「幻冬舎とも大喧嘩して出入り禁止らしい」

と横やりを入れて、NGを出す。

 

まあ、全部本当のことなので否定をするつもりはないが、

もう10年以上前のネタを、よく探してきたなあ……と感心してしまう。

 

俺も今じゃあ年をとって、少しは丸くなったのにな(笑)

 

俺はいつも同世代の人間に対して「おかしい!」とモノ申しているが、

あちらからしてみれば、おかしいのは押川だろってわけだ。

 

しかし、これも、否定できなかったりする。

 

なぜなら、俺がいつも「おかしい!」と言っている40代の生き方って、

当時の時代背景からみれば、まさに「正しいルート」だったんだ。

 

いい学校に行って、いい会社に入れば、安定した暮らしができる。

周囲とよけいな摩擦をおこさず、上にゴマをすっておけば、

新しい仕事を生み出すなんてリスクを冒さなくても出世できる。

身体を張って危ないことに挑戦したり、ヤバイ現場に行ったりするなんて、

アホのすることだ。

 

時代の空気も教育も、そういうものだったと思う。

その意味では、はみだしまくっていたのは、俺のほうだったのだ。

 

でも今になってみると、時代はすっかり変わってしまって、

資格やら肩書きを持っていても食えない40代や、

会社に属してはいるが、使えない40代が続出している。

 

ようするにこの国は、先の時代を見据えた教育を、してこなかったんだな。

 

それは、俺たちより下の世代を見ていても思う。

30代の奴らだって、幼少期から思春期くらいまでは、日本も成長期で、

大人たちがイケイケで生きているのを目の当たりにしてきた。

 

現場仕事は「きつい・汚い・危険」の3Kと敬遠され、

現場仕事をしなくてすむために、勉強しろ勉強しろ、と言われて育ってきたはずだ。

ところがいざ、自分たちが就職する段になったら、超・就職氷河期である。

そりゃあ、ひきこもりも増えるわな。

 

うまいこと安定した企業に入れても、

狂った40代に押さえつけられて、心を病んでしまって、

糸の切れた凧みたいになっちゃった奴も、少なくない。

 

それでも、多感なときに、オウムの事件や阪神大震災、

アメリカ同時多発テロなどを経験しているから、

俺たち40代に比べたら、よっぽど真剣に生きている奴が多いと思う。

 

さらに下の20代になると、最初から厳しい時代を見てきているせいか

刹那的というか、ぶっ飛んでいる奴は、本当にぶっ飛んでいて、

宇宙人かな? と思っちゃうくらいだ。

 

で、俺たち40代世代は、上ばっかり見て生きてきたから

そういう20代30代の下の世代にどう接したらいいか、

どう育てていったらいいか、まるで分からない!

という状況になっているんだな。

 

そしてこれからは、そんな頼りない40代がこの国を支えていく時代がくるのだ。

考えれば考えるほど、けっこう恐ろしいことである。

 

こうなると、深く考えるのをやめたくなるかもしれないが、

俺としてはやっぱり、「自分で考える」ということが、大事になると思う。

本質というのは、学のあるなしとか、どこかに属しているとか関係なく、

一生懸命感じて、考えれば、見つかるもののはずだ。

 

子供の教育にしたって、結局は、自分で考えて対応できる、乗り越えられる、

そういう人間に育てることが、求められているのではないかな。

俺は今のところ、そう思っている。

 

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