今年最高のラーメン

昨日は、ある患者さんのグループホーム入所に同行した。

 

この患者さんは、重度の統合失調症で、

家族から相談を受けて俺が介入したときには、会話も成り立たず、

社会性をまったく失っている状態だった。

 

俺は、本人を説得してまずは医療につなぎ、

その後も面会などを重ね、人間関係を育んできた。

 

入院治療により症状は改善したものの、問題行動やトラブルがないわけではなく、

退院後の自宅での受け入れは難しいと、家族は判断した。

自宅に戻ったときには、病気が再び悪化するだろうということは、

家族だけでなく、俺も感じたことだった。

 

そこで、本人がゆっくりした気持ちで社会復帰を目指せるよう

サポート体制の充実しているグループホームに、入所することになったのだ。

 

そして昨日、俺は彼を病院まで迎えに行き、

グループホームを目指した。

 

途中、役所での手続きなどもこなしながらの行程で、

気がつけば昼もだいぶ過ぎていた。

 

グループホームはもう目と鼻の先だったが、

俺はあえて、彼をラーメン屋に連れて行った。

 

店内に客はほとんどいなくて、

運ばれてきたラーメンは、まあまあ、といった味だった。

だが彼は、「美味しいですねえ」と言いながら、ラーメンと焼き飯を完食した。

 

俺は嬉しかった。

 

実は彼は、グループホームへの入所が決まった際、

数日、メシも食えないほど不安定になっていたのだ。

入所に関しては、俺も家族と一緒に説明したし、

本人も納得して、自ら「行く」と答えたのだが、やはり不安もあったのだろう。

 

だから俺は、ラーメンを完食した彼の姿に心を動かされたし、

食後に、「ありがとうございました」としみじみお礼を言われ、

とても嬉しかったのだ。

 

ラーメン一杯で、こんなにこころのこもったお礼を言われることなど、

生きていて、あんまりないことだ。

逆に俺のほうが、元気や勇気をもらった。

 

今年最高のラーメンだった!