兵庫・洲本市5人殺害

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(以下引用:TBS News-i 2015年3月11日)

 
兵庫・洲本市の5人殺害、保健所に6回相談

 

 

先日、移送業務を行った患者の家族は、

兵庫県洲本市で起きた5人殺害事件のニュースを見て

「とても他人事とは思えない」と言っていた。

 

容疑者はひきこもりの生活を続けており、

精神科への入通院歴もあったという。

 

容疑者の親が、保健所に何度も相談に訪れていたことも、

ニュースで報じられている。

 

しかし、保健所や精神保健福祉センターが、

「何かあったら110番を」と、すべて警察に振りまくっていることは、

このブログの読者なら、すでにお察しのことと思う。

 

つまりは、起こるべくして起きた事件なのだ。

 

それにしても、こういった報道があると、

「精神疾患と事件を安易に結びつけてはいけない」

「偏見や差別を助長しかねない」などと言う専門家もいる。

 

たしかに、大多数の精神障害者は、精神疾患が原因で事件を起こすことはなく、

治療を受けることで、健全に暮らし、社会参加もできている。

 

しかし、被害妄想や幻聴などが慢性に持続し固定化してしまい、なおかつ行動化して、

近隣住民などと社会トラブルになっているような患者が一定数いることは、

まぎれもない事実なのだ。

 

そのような重篤な患者ほど、保健所や精神保健福祉センターなど主管行政機関からは

「何かあったら110番通報を」と言われ、

家族は事件化するのを待つしかない状況に追い込まれている。

 

なんとか医療につながることができても、

精神保健福祉法の改正以降は、ますます早期退院が推し進められ、

症状の軽重にかかわらず、十把一絡げに短期間の治療で退院を促される。

 

これでは、重篤な症状をもつ精神障害者の起こす事件は、増える一方だろう。

しかし、この分野に詳しくない一般の方々からしてみれば、

精神保健分野のシステムなど知りようもなく、ただ、漠然とした恐ろしさばかりが募る。

 

国の方針は、「社会的入院をなくす」とか「患者を地域社会で受け入れるとか」

聞いている分には、とても素晴らしいものだけれど、

現実は、事件を起こしかねない重篤な症状をもつ精神障害者が放置され、

家族は肩身の狭い思いをし、眠れない日々を過ごしている。

 

そういう意味では、現行の精神科医療のシステムこそが、

「精神障害者は危険だ」という偏見や差別を増長する結果となっている。

 

今こそ、難治性の精神障害者に対する対応や

その家族への支援について、おおいに議論をすべきではないか。

 

現行のシステムでは機能しているとは言いがたいうえに、

現場の危険性・緊急性は、格段にあがっているのだ。

初動対応を任せられる第三者機関の必要性が、強く求められる。