HIKIKOMORI~アメリカメディア①

 

「ひきこもり」というのは、日本特有の問題かと思っていたら、

実は今、アメリカや欧州などでも、社会参加できない若者が増加しており、

名称もそのまま「HIKIKOMORI」として、

調査や研究の対象になっているのだそうだ。

 

その「ひきこもり」の先駆けが日本であるからこそ、

わざわざ来日して取材をしている、海外メディアも少なくない。

 

で、俺のところにも、アメリカのテレビ会社から取材依頼が来た。

俺はよく知らなかったのだが、世界的にメジャーな会社ならしい。

 

聞けば、仲介役の日本人プロデューサーが、今年7月にTBSで放送された「THE 説得」で俺を知り、

映像をアメリカのプロデューサーにみせたところ、「Oh, My Gosh !」となったと言うんだな。

 

ようするに、彼らアメリカのメディア陣は、これまで

【不登校や就職の失敗等をきっかけに、なんとなく家から出られなくなって、

部屋で一日中、漫画やアニメ、ゲームに没頭している】

そういう若者が、イコール「HIKIKOMORI」だと思っていた。

 

だから、ちょっとしたきっかけ……

たとえばひきこもりを支援する方々が自宅を訪問し、本人に働きかけることで、

部屋から出られて、社会復帰もできて、ハッピーになれる。

その程度のものだと、考えていた。

 

実際、アメリカに流布しているひきこもりの情報や、

取材映像、書物なども、そのレベルのものが、ほとんどだという。

 

ところが、「THE 説得」でみた現実は、そんなに生やさしいものではなかった。

 

当事者にも家族にも、命の危険が迫っている。

 

背景には、不登校や無就労だけではない、

精神疾患に罹患しているケースや、複雑な家族の問題もある。

 

介入するには、医療や福祉のサポートはもちろん、

危機管理として、警察の協力を必要とする場合も、ある。

 

『これこそが「HIKIKOMORI」の実態ではないか!』

 

俺のところに来たアメリカのプロデューサーは、

「THE 説得」を観て、そう思ったのだそうだ。

 

たしかに、ちょっとしたきっかけや関わりで社会復帰ができる、ひきこもりの方もいる。

 

しかし、現実には、複雑な親子関係や精神疾患、その他の障害、

もともとのパーソナリティの問題など、さまざまな要因がからみあい、

親と子の殺傷事件にまで至るようなハードなケース…… 以前にもブログで書いたように、

「ひきこもり」ではなく、「たてこもり」のレベルにあるケースは、増える一方だ。

 

そもそも「ひきこもり」という名称は、1980年代から耳にするようになり、90年代に入ると、

厚労省も、「不登校・ひきこもりに関する対策事業」を策定している。

 

しかし今になって、結果はどうだろう。

 

「ひきこもり」が長期・高齢化、また、増加していることは、周知の事実だ。

すべてがそうだとは言うつもりはないが、多発する親族間の殺人においても、

「ひきこもり」や「無職」というキーワードを、避けて通ることはできない。

 

行政や福祉はここ数年でさらに、「ひきこもり」対策を盛んに謳うようになったが、

今もってなお、ハードなケースには深入りしようとしない。

 

だからこそ家族は、子供の問題を漠然と「ひきこもり」として捉えるしかなく、

問題の本質となる要因や、具体的効果のある対応策を見つけられずに、ただ、右往左往している。

 

日本のメディアも、この現状を、黙殺だ。

 

国内においても、この状況なのだから、海を渡った日本の「HIKIKOMORI」が

実態を告げられるはずがない。

 

今回、アメリカから来たプロデューサーは、

俺の経験や、見聞きしてきた家族の実態を聞きながら、

何度も「ジーザス!!」と叫んでいた。

 

『今、アメリカに知れ渡っている「HIKIKOMORI」は、真実ではない!!』

 

そんな風にも話していた。

 

だから俺も言ってやった。

 

『「HIKIKOMORI」に関しては、俺んとこが老舗であり、最先端でもあるんだよ』

 

しかしながら今回の取材依頼に関しては、

先方が「THE 説得」を観て、慌てて飛んで来たこともあり、

「○日までにハードなケースを撮りたい」「モザイクなしの取材をしたい」

などといった要求ばかりを突きつけてきたので、丁重にお断りした。

 

俺だって今回は、「日本のメディアが腰を上げない以上、

海外から真実を広めてもらうしかねーな!」

と、相当な気合いと覚悟で、話し合いの席に着いた。

 

相手のプロデューサーとも、闘いのような勢いで議論を交わしたが、

最終的に、「俺のスタイルを変えてまで、取材に応じることはできない」

という結論に至ったのだ。

 

自分でいうのもナンだが、俺の説得は、

繊細で丁寧でこころのこもった、大和魂100%で出来ているからね。

 

「THE 説得」だって、事前に制作陣と何度も話し合い、

準備にも撮影にも、相当な時間がかかっているのだ。

 

真実を伝えることで、現状を変える。

 

それが俺の、唯一の希望だ。

その「志」を忘れなければ、また良い機会が巡ってくるだろう。

 

fu01