コーヒー プレジデント
俺は小学校の三年生の時から、コーヒーをブラックで飲むようになった。
近くに住んでいた叔父の影響である。
母子家庭だった俺には、この叔父が父親代わりで、何かと影響が大きかったのだ。
叔父は「キリマンジャロの酸味が良いんだ」とか言って、
家でも会社でも自分で豆をひいて、丹念にお湯を注いで香りを楽しみ、
ゆっくり味わって飲んでいた。
そういう場面に俺が出くわすと
「たけしも飲め」
と言って、コーヒーを飲ませてくれた。
それは必ずブラックで、砂糖やミルクは入れさせてもらえなかった。
小学校三年でそんなコーヒーのたしなみ方を覚えてしまったもんだから、
中学で同級生たちが好んで飲んでいたコーヒー牛乳なんかは、受けつけなかった。
高校生になってからは、自分で入れて、毎日コーヒーを飲むようになった。
インスタントだけどな。
それ以来、ほとんど毎日コーヒーを飲んでいる。
多い時は一日に20杯くらい飲むときもある。
本物のコーヒー通の人は、俺の叔父みたいに豆からひいて楽しむんだろうけど、
俺はインスタントで十分だ。
だけど、インスタントコーヒーもずいぶん進化したよな。
昔はスッカスカのスペッーとしたやつしかなかったのにな。
俺は相当、いろんな種類のインスタントコーヒーを口にしてきたけど、
最近はもっぱら『ネスカフェ プレジデント』が気に入っている。
これは美味い。
値段はちょっとお高いんだけど、そこがまた贅沢している気分になれていい。
お湯を注いでいる時に、ちょっと笑みがこぼれちゃうくらいだ。
疲れもとってくれるんだから、安いもんだよ。
この「プレジデントォ~~」っていう響きも
(俺が勝手に頭の中でそう呟いているだけなんだけど)、
なんとなく心地良い響きなんだな。
俺が死んだら棺桶に入れてもらおう。
俺は基本的に、自分の趣味や嗜好品を人にすすめるってことが好きじゃない。
洋服なんかを買いに行って、店員に「こちらもオススメですよ~」なんて言われると、
そそくさと店を出てしまうタイプだ。
逆にちょっとシロートの、あんまり売るのがうまくないような店員に声をかけられると、
店を出る勇気すらなくなってしまって、言われるままに買ってしまう。
なんだか好みの押し付けっていう気がして嫌なんだよな。
でも「プレジデント」については、ちょっと熱く語ってみた。
最近は、コーヒーの効能が科学的にも立証されているらしいな。
無茶ばかりしてきた俺が大きな病気をしてないのは、
もしかしたらこのコーヒーのおかげなのか?
だとしたらプレジデント様々だな。
ちなみに今も、プレじってるぜ(笑)。