故郷福岡を推してみる

この何年か、仕事の関係で東京と福岡を行ったり来たりしている。

 

俺は小倉(現北九州市)で生まれ育ったが、高校卒業後に上京した。

それ以来、地元の親戚とも疎遠だし、小中高時代の友達も数えるほどしかいないので、

故郷に対する思い入れは、ほとんどない。

 

ヤバい家族からの相談にのったり、ヤバいひとに会いに行ったり、

そういう仕事をしている俺には、何でもごった煮の新宿のような街こそが、性に合っていると自覚している。

文化や流行の面から見ても、やはり東京は最先端だとは思う。

 

しかし、どちらが暮らしやすいかと聞かれれば、俺は「福岡」と答えるだろう。

 

とくに北九州市は、東京のように人が多くないので、ごちゃごちゃした感じがしない。

気温も湿度が低いせいか、東京に比べて湿っぽくなく、過ごしやすい。

自然もまだまだ残っているし、道路も電車も混雑していない。

 

そして、なんたってメシが旨い。

魚は刺身も干物も、肉は牛、豚、鶏、なんでも旨い。

東京じゃ高い金を払わない限り食えないようなものが、スーパーに並んでいるのである。

 

外食となれば、もっと面白い。

外観は汚いけど、格安でとてつもなく旨いものを出す店とか、

めちゃくちゃ旨い鮨屋なのだが、気に入った客にしか握らない店主がいるとか、

すごくシンプルなんだけど、ありえないくらい旨いラーメンを出す店とか……

まあ、知れば知るほど、奥深く、味わい深い。

 

基本的に、はっきりきっぱり物申す土地柄なので、

不味い物を出す店は、自然と淘汰されていくのだ。

 

あとは、自然災害が少ないことね。

俺は、十代で上京したときに何に驚いたかって、東京の地震の多さには、本当に驚いた。

北九州なんて、体感する震度の地震が、ほとんどないんだぜ。

 

今でも、福岡に行っている間は、地震の心配をしなくていいので

それだけでストレスも軽減する。

これは今の時代、大きなポイントだな。

 

最近は、小倉だけでなく博多に出向く機会も多いのだが、

街の賑わいやファッションビルの多さは、東京と遜色ない。

さらには、独自の文化を打ち立てようという勢いもあると、個人的には感じている。

 

東京と福岡という離れた土地を行き来して、これは俺の欲目もあるかもしれないが、

福岡はこれから、東京と比較したり競ったりするのではなく、

独自のスタイル、文化で成長していくのではないかな。

 

もちろん、福岡以外の地方にも、独自の良さや面白さがあるのだろう。

 

そういう実態を肌で感じている俺としては、

東京での生活に行き詰まったひとたちが、地方に移ることで人生を立て直す。

そんな土台を作れないものかな……と、最近とみに感じているのである。