記録がなければ助からない!!

拙著の出版以来、事務所への問い合わせやフェイスブックへのメールなどに、

「押川さんが過去に書いた本も読みたい」

「なかなか手に入らないのだが、どうすればよいか」

という質問をいただくことが増えた。

 

Amazonを覗いたら、中古品にバカみたいな値段がついている。

 

ありがたいことでもあるのだが、どれも10年以上前に書いたものであり、

俺としては、若くて未熟な部分も多く、恥ずかしい面もある。

 

過去の著書の中には、親子関係のノウハウというか、

マニュアルというか、そういうことを書いたものもあるのだが、

改めて振り返ってみると、やはり親子関係や子育ては、

ノウハウで語れるものではないなと、自戒を込めて感じている。

 

たとえば俺も説得をするときには、

家族へのヒアリングから、対象者がどんな人物か想像をはたらかせ、

問題行動に関しても、「これが原因だろう」と、おおかたのアタリをつける。

家族や親についても、これまでの言動や経緯から、

「ここに問題があるから、今後はこうしていったほうがいいな」

ということを、考えていく。

 

それは、俺がこれまでに1000人以上の対象者、そして家族と

携わってきた経験則があるからこそ、できる予測である。

俺の中に、「こういうときは、こう」というような、

いってみればデータベースのようなものがあるのだ。

 

ただし、そのデータベースも、100%ではない。

調査を進めるうちに、違う方向が見えてくることもあるし、

本人に会ってみて初めて分かる部分も、たくさんある。

 

対象者の中には、俺を見るなり「(顔が)嫌いだ!!」というひとだっている。

「そんな汗臭い身体で近寄らないで!!」と叫ばれたこともある(笑)。

そういう方に話を聞いてもらうためには、瞬時の創意工夫が必要になってくる。

 

説得をして医療機関(や施設)につないだあとも、同じだ。

こちらの予想を超えて、すごく良くなるひともいれば、

思っていたより状態が悪い、対応が難しいひともいる。

俺の想像の斜め上をいくような、問題行動をとるひともいる。

 

予想外のことが起きたときに臨機応変に対応できるか。

そこにこそ、俺の人間力、人間そのものが問われている。

 

時々、説得のノウハウを教えてほしい……と言われることもあるのだが、

時代の変化とともに、俺自身も常に、進化成長を求められているのだ。

だからこそ難しくもあるし、やりがいがあるとも言える。

 

それは親子関係、子育ても同じなのだろう。

世の中には、子育てのノウハウ本、マニュアル本がたくさんあって

その中にはもちろん、素晴らしいものもあるのだろうけど、

「この子はこういう子だから、こうすればいい」というような、

完璧な正解なんて、あるはずがない。

 

それよりも今、俺が言いたいのは、「記録」の重要性だ。

「記録」こそが、どんなノウハウ本、マニュアル本よりも、

子供や家族の成長を助けると言ってもいい。

 

今は多くのひとが、ブログやフェイスブックを活用する時代だけど、

他人に見せることが前提だと、どうしても見栄や嘘も出てくる。

俺の言う記録は、“事実を記録していく”ということだから、

自分にしか読めないかたちで書くのが望ましい。

 

子供が日々、どんなことを言って、何をして過ごしたか。

面白かったこと、嬉しかったこと、腹が立ったこと、心配なことなど……

毎日じゃなくても、短くてもいいから、正直に、本音で書く。

 

日々が重なり、記録が増えていくにしたがって、

過去を客観的に振り返ることもできるし、

我が子がどういう個性を持った子供か、

また、自分たち夫婦、家族はどういうかたちなのか、

「真実の歴史」が、だんだん見えてくるだろう。

 

もし万が一、何か問題が起きたときには、そのような正確な記録が、

専門家が状況を判断する際の、重要なエビデンス(根拠)にもなる。

 

これだけ教育が行き届き、誰もが文字を書ける時代だ。

世の中には、国家資格をもった専門家があふれかえり、

相談に行けば必ず、「情報(事実)を開示せよ」と要求される。

 

逆にいえば、正確な記録を持っていなければ、

専門家にはまったく相手にされずに、終わってしまう。

 

ガキの時分、「日記は毎日、書くものだ!」と教師から強いられたものだけど、

実はものすごく理にかなったことだったんだな。

 

健やかで幸せで、どんなトラブルにも平然と対応できる、

人間らしい生活を送りたいと思うならば、

これからは、記録こそが、最強の武器になるだろう。

 

積み重ねた正確な記録は、その親、その家族にしかできない、世界でたった一つのものだ。

それぞれの家族・個人の、最強のマニュアルになると言っても過言ではない。

 

それそのものが愛情の結晶と言えるし、

家庭崩壊を招かないための礎にもなるのだ!

 

表紙    押川チラシ