悪いうわさ ウェルカム

仕事の内容が特殊なせいか、定期的にテレビ業界の人間から「取材させてください」っていう依頼が舞い込んでくる。

一番初めは、「精神障害者移送サービス」を始めて3~4年が経った頃だったな。俺は当初から「説得」を前面に出して移送をやっていたんだけど、テレビの奴らは、「そんなことほんとにできるんですか?」って、ハナっから懐疑的な口調で、俺の事務所に来た。「どうせ“口からでまかせ”なんだろ? その嘘を俺たちが暴いてやるぜ!」みたいな勢いで、俺はマスコミってこういう感じなんだ…って、嫌な印象を持った。

でも、俺も若かったから、「じゃあ現場、見せてやるよ!」とむしろ闘志を燃やしてしまって、取材に協力してくれるっていう家族のときに、カメラを入れてもらった。そうやって実際に現場を見てもらったら、マスコミの人たちも「へええ~」って、驚いてたね。

「押川さんには申し訳ないけど、僕なら1億円もらってもこの仕事は無理です」ってなことを言う、真面目なディレクターもいた。現場は壮絶だからね。スレスレの奴らに、丸腰で正面切って話をするんだから、命がいくつあっても足りねえ、と思ったんだろうね。それからはわりと、テレビ業界の人たちとは友好的にやってる(つもり)。

それにしても、俺がテレビに出ると、ネット上に、ものすごい俺の悪口があふれるんだな(笑)。前にも書いたけど、youtubeにある俺の映像のとこにも、誹謗や中傷、批判ばっかしだしな。「ネット上の書き込みなんて、匿名だから気にすることないよ」って、わざわざ俺をなぐさめてくれる人もいるんだけど。匿名だからこそ、自分の思ったまんまの意見が言えるっていう側面もあるしな。だから俺は、どんな誹謗・中傷も、楽しく読んじゃう。

俺は、良いうわさより、悪いうわさのほうが好きなんだな。もし良いうわさばっかり広まっちゃったら、ふだんからちゃんとしてなきゃ、ってなるだろ? それは嫌だし無理だ。俺の素敵な人間味がなくなっちまうぜ。だいたい良いうわさを拡散しようなんて、どだい無理な話なんだよ。仮に莫大な金を使って、美しいCMを作って垂れ流したところで、逆に胡散臭くなるだけだろうしな。

その点、悪いうわさはとてもいい。みんな、映像を観ただけで、バンバン俺のこと書き込んでくれるんだもんな! その原動力が俺への嫌悪感や怒りだったとしても、躊躇しないところがいいよ(笑)。あちこち拡散してもらって、むしろありがたいくらいだ。

誹謗、中傷、批判、摩擦、波紋が起きるということ自体、すでにその実態から目を背けられないということだ。俺の役割は、実態をこの目で見て、感じて、社会に伝えることだから、そこから先は頭の良い方々で議論をしてもらって、この国(社会)が成熟していくための、踏み台になればいいと思っている。

そういや昔、わりとお固めの組織から講演に呼ばれて、持ち時間いっぱい、下半身の話題を力説したことがある。俺にとって、心の病気と下の話(性の話)ってのは切り離せないものだから、あくまでも真面目に話したんだけどね。主催者はあわ食っちゃって、あたふたしてたよ。「押川は下の話ばかりして、どーしようもない」ってうわさになって、それ以来、そっちの業界からは、講演のお声がかからなくなった(笑)

でも、その時も別に気にしなかった。俺の講演のファーストプライオリティーは、いかに多くの人に「もう二度と押川の講演なんかには行きたくねー」と思ってもらうかってところにあるからな。だって俺自身は、どこのどいつか分からない大多数を前に話をするわけだろ。それこそ「勝負だ!」ってくらいの心構えで挑まないと、本当のことは言えないんだよ。聴衆の大半に「聞き苦しい話だったな」って思われても、本気で困っている人、問題解決したい人には、俺の言葉が届くだろっていう自信がある。

でも、こんな悪いうわさばっかりの俺に、「ぜひ本当のことを話してください」っていってくれる場所があったら、俺は、喜んで行くからな! たっぷりサービスするぜ!

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