Jacksonville shooter had history of mental illness and police visits to family home

米南部フロリダ州で8月26日、ビデオゲーム大会中に銃乱射事件が起きた。興味深い続報(海外ニュース)があったので紹介する。2人が死亡、10人が負傷した事件で、犯人の男(24歳)も犯行後に銃で自殺した。続報によると、男には精神疾患の病歴があり、過去には、警察官が自宅訪問をしたこともあったという。

 

(以下引用:CNN 2018年8月28日)

Jacksonville shooter had history of mental illness and police visits to family home

 (ジャクソンビル銃乱射事件の容疑者は精神疾患の病歴や、警察官が自宅に訪問したことがある)

 

原文はこちら↓

https://edition.cnn.com/2018/08/28/us/jacksonville-madden-shooter-katz-mental-health-invs/index.html

 

(以下、訳文 ※読みやすくするために、太字はこちらで入れております)

デイビッド・カッツは、ジャクソンビルで日曜日に開催されたeスポーツトーナメントで、2人を銃撃して殺害し、10人を怪我させ、その後、自殺した。家族の離婚記録によると、カッツは12歳のときに、精神的な問題で治療を受けていたことが分かった。

死亡時に24歳だったカッツは、過去に抗精神薬を含む精神疾患の薬を複数処方されており、2006年の父親の弁護士の記録文書によると、「頻回に精神科を受診していた」という。同じ年の離婚裁判のファイルには、「カッツは“精神的危機”を経験したとセラピストが言った」と書かれていた。

CNNは警察記録も入手しており、1993年~2009年の間に計26回、メリーランド州コロンビアのカッツの自宅から、警察の出動要請があったことが分かっている。内容は、「精神疾患」に起因するトラブルや家庭内トラブルであった。うち少なくとも2回は、カッツが母親と口論したものであったが、CNNが入手したレポートには、身体的な暴力行為に関する内容は含まれていなかった。ハワード郡警察署は、法令制限を理由に、カッツに関する過去の多くの出来事についての報告書の情報開示をしなかった。

警察関係者によると、日曜日(2018/8/26)の襲撃が起きてから、カッツの家族は捜査に非常に協力的で、捜査官に対して、デイビッド・カッツはメンタルヘルスの問題で苦しんでいたと話したという。両親共に連邦政府機関で働いており、父親のリチャードはNASAのエンジニアとして、ワシントンDC郊外のゴダード宇宙飛行センターで雇用されており、母親のエリザベスは離婚時、食品医薬品局の勤務履歴が残っている。双方からのコメントは出ていない。

裁判記録によると、両親の離婚と親権争いは壮絶であった。両親共に、息子の代弁者として、訴訟後見人を付けていた。両親は彼のメンタルヘルスの治療について、全く意見が異なっていた。

デイビッド・カッツは幼少期、感情的な面で苦しみ、抗うつ剤のレクサプロや、統合失調症の治療に用いられることもある抗精神薬のリスペリドンを含む精神障害の治療薬を処方されていた。2006年の父親の弁護士の記録文書によると、母親は彼を何人もの精神科医やソーシャルワーカー、アートセラピストの元へ連れ回していたという。

母親が求めていた精神障害の治療薬や精神鑑定の必要性について、父親は異議を唱えていた。息子には、そういった治療の代わりに、「中学生向けのサポートグループに参加」するべきと提案した。父親の弁護士の申し立てには、「リチャード・カッツは、デイビッドが統合失調症であるような症状は全く見たことがない」と記載があった。

ある時、デイビッド・カッツは精神科の診察を拒否し、車内に閉じこもって車をロックしてしまった。その後、「彼は警察から手錠を掛けられた」と、弁護士の資料にある。

警察の報告書によると、彼の13歳の誕生日の翌日、「テレビのボリュームの問題と、母親や祖母に対する粗暴な態度」を理由に、母親は警察を呼び、助けを求めた。別の報告書によると、14歳の誕生日の翌日には、カッツ自ら「母親が罰として、ビデオゲームを取り上げ続けている」という理由で警察を呼んだという。

 

銃撃戦の生存者によると、ジャクソンビルの複合商業施設で行われていたマッデンNFLビデオゲームトーナメントで、カッツはゲームに負けた後、別の競技者を銃撃したという。彼はその後、自身が所持する拳銃で自殺した。

当局者によると、カッツは2018年7月に、彼の自宅があるメリーランド州で9mmと45口径の拳銃を合法的に購入していた。拳銃の1つは、レーザーサイトが備わっているものであったという。彼がどのようにしてジャクソンビルまで拳銃や銃弾を運び、イベント会場に持ちこんだのかは不明だ。

連邦銃規制法では、本人の意思に反して精神科病院に入院させられたことがある者や、「心神喪失状態にある」と判定されたものは、銃器の購入を禁止されている。しかし、精神的な問題の病歴があることで、その人物が銃器を購入出来ない訳ではない。そして、そういった病歴はプライベートな患者の情報として保護されている。

2013年以降、メリーランド州の住民は、拳銃やレボルバーを購入するには、事前に州警察の銃器認定資格を取得しなければならなくなった。カッツが合法的に拳銃を購入したということは、指紋を提出し、バックグラウンドチェックを受け、銃器安全訓練コースに合格していたということだ。

 

CNNは、ボルチモア北部にある、カッツの前のステップマザーの家を訪ねた。そこで出会った匿名の男性によると、彼らはカッツがビデオゲームをしていることを知っていたが、カッツが拳銃を所持していることは知らなかったという。銃乱射事件後のつい最近、ボルチモアのフェデラルヒルの近くに住んでいたカッツの父親の家が、家宅捜索されたという。

カッツは、コロンビアのハモンドハイスクールに通っていた。CNNはカッツを覚えている卒業生にインタビューした。1年先に卒業した男性は、彼のことを「非社交的な」ビデオゲーマーとして覚えていた。「カッツは1人でいて、あまり話さなかった。良い子だったから、彼がこんなことするなんて信じられない」と話した

カッツと同じ2011年に卒業した男性は、数回だけ話したことがあったという。彼の控えめな性格を覚えていた。「カッツは静かな子だったけど、話しかけた時は良い感じだったよ」と話した

 

メリーランド大学のスポークスマンによると、高校卒業後から3年経った後、カッツはメリーランド大学の授業に参加するようになった。2014年9月に入学したが、2018年の秋は履修登録をしていなかった。カッツはキャンパス外に住み、環境科学と環境技術を専攻していた。

メリーランド大学の学長は公式声明を出した。声明の中で、カッツのホームタウンからほど近いアナポリスの新聞社で2018年6月に起きた銃乱射事件についても言及した。「ジャクソンビルで起きた悲劇的な銃乱射事件で亡くなられた被害者の家族にお悔やみを申し上げます。今夏、アナポリスで起きた銃撃事件で、私たちのコミュニティが影響を受けた時、私はこの国で起きている銃による暴力の蔓延を終わらせるのに必要なのは、静かに思案することではないと述べました。本日、同じことを繰り返したいと思います。」

 

他の記事によると、犯人の男は精神科受診歴だけでなく、メンタルヘルスに関する施設への入所、セラピー受講など、さまざまな治療を受けてきた履歴があるという。

『幼少期から情緒不安定/両親が不仲(離婚)で子供に対する認識・対応にも相違がある/医療機関や施設を転々としてきた』…という経歴は、俺への相談や依頼でもよく目にするため、いろいろと考えさせられる。

アメリカでは、このニュースのように、重大事件を起こした犯人の経歴は、精神科の受診歴から家庭環境まで事細かに報道される。このあたりは日本とは大きく異なるわけだが、それができるのも、裁判記録の閲覧が可能だからだろう(日本では、刑事訴訟法上は『何人も、被告事件の終結後、訴訟記録を閲覧することができる』とされているが、実際の運用上は、事件関係者以外からの閲覧請求は原則不許可とされる傾向にある)。

以前、俺のメンターである方が「裁判記録が閲覧できないのは、先進国では日本だけ」とおっしゃっていた。個人情報を開示することの是非はあるだろう。しかし、日本でも最近は、動機に首をかしげるような凶悪事件が相次いでいる。同様の惨劇を繰り返さないためにも、犯行の背景にあるものが明らかになることを願う。それが、事件防止や危機対策に役立つはずだ。

 

※事件を伝えるABC News

 

お知らせ

10~12月期の新潮講座に登壇します。ご参加、お待ちしております!

お申し込みはこちらよりお願いいたします。