誤解を恐れている場合ではない!専門家やメディアが言えない本質を、押川が斬る!

 

「警察に捕まろうと」面識ない人を金属パイプで撲殺容疑

神奈川県警は、同県大磯町高麗1丁目の会社員、後藤優容疑者(32)を殺人の疑いで緊急逮捕し、14日発表した。後藤容疑者は調べに対し、「人を殺して捕まろうと思った」と容疑を認めているという。

県警によると、後藤容疑者は13日午後、大磯町国府本郷の県立大磯城山公園内の公衆トイレから出てきた同町生沢の無職吉川友義さん(44)の頭や背中などを金属パイプで殴り、殺害した疑いがある。県警は、後藤容疑者は吉川さんと面識がなかったとみている。

同日午後6時45分ごろ、県警大磯署の前にある公衆電話から後藤容疑者が「人を殺した」と110番通報をしてきた。酒を飲んでいる様子だったという。

吉川さんは公園のトイレ近くで倒れていた。頭が陥没していたという。現場からは金属パイプが1本見つかった。後藤容疑者は「最初に見かけた男の人を殺そうと思った」「パイプは13日の昼ごろ、大磯町の海岸に落ちていたのを拾ってきた」と説明しているという。

吉川さんの母親は「誰でも良かったと話しているのが一番許せない。去年夫を亡くし、(吉川さんは)『お母さん、いつまでもめそめそしていちゃダメだよ』と声を掛けてくれた。家族でやっと立ち上がってきたところなのに」と涙を流しながら話した。40代の兄は「弟は実家の農業を手伝っていた。ここ10年ほどは散歩していて、トイレがあるから公園に寄っていたのでは」と気落ちした様子だった。

引用:朝日新聞デジタル 3/14

 

たまたま鉢合わせしたという理由だけで、またしても尊い命が奪われた。

昨今の無差別、通り魔的な殺人事件をみていると、いつなんどき、

自分や自分の身近なひとが犠牲になってもおかしくない、と思う。

 

こうした事件は、第一報が流れた後は、あっという間に忘れ去られていく。

加害者がどんな人物で、どんな経緯があったのか。「なぜ」の部分は、なかなか報道されない。

市民も「運が悪かった」「なんて気の毒な」と、感情だけで捉えてしまう。

 

今回の事件について、記事で目を引いたのは、「人を殺して捕まろうと思った」

「(頭が陥没するほど)頭や背中などを金属パイプで殴る」「酒を飲んでいる様子だった」という点である。

 

なぜならそれは、俺が現場で見てきたアルコール依存症の患者を想起せずにはいられないからだ。

飲酒と暴力、凶器類は必ずセットになっていたし、親に対してのみならず、

「その辺のガキを殺してやる」「通り魔事件を起こしてやる」

といったことを、激しい勢いでよく口にする。

 

もちろん、この事件の加害者がアルコール依存症かどうかは分からない。

ただ、これまでも当ブログで書いてきたように、亡くなられた方にできるせめてものこととして、

「この事件を防ぐことはできなかったのか?」

という視点に立って、事件を考えてみることが最も大切だ。

 

そうすると俺の立場では、容疑者の背景(生活史など)によっては、

家族や身近なひとは、本人の異変や異常な行動に気づいており、

医療的な介入のチャンスもあったのではないか? と考えが及ぶ。

「人を殺して捕まろう」と考えつくに至る経緯が、必ずあるからだ。

 

ちなみにアルコールなど依存症については、

その多くが根底に精神病質があることが臨床的に確かめられている。

しかし、「精神病質」に関して専門に治療してくれる病院や医師は、ほとんどいない。

また国の制度も、そのような専門病院へ報酬が落ちるようにはなっていない。

 

現実は周囲が危険を察知していても、被害者を出すような事件が起きるまでなすすべがなく、

そしてすべてが司法機関へ丸投げされる状態だ。

 

専門家の、「まだ事件を起こしたわけではないから」「グレーゾーンだから」

というもっともらしい言葉によって、精神病質者が野に放たれている。

この現実に真剣に向き合わなければ、こうした事件を防ぐことはできない。

 

3月21日発売の、月間コミック@バンチ5月号の『「子供を殺してください」という親たち』は、

まさにこの「アルコール依存症」をテーマに、原作の文庫では書けなかったことも盛り込んでもらった。

「現場ノート」にも魂を入魂した。

 

アルコール依存症については、未だに「酒さえやめればいい」

「酒を飲むからダメなのだ」と言われることが多いが、

そうではないという本当の問題が、より多くの方々に伝わってほしい。

 

メディアを通じてでは伝えることの限界があるテーマについて、

漫画という手法をつかって、世に訴えていきたい。

 

被害に遭われた方に、心からお悔やみ申しあげます。

 

追伸:拙著をご購入くださり、またご感想をくださった皆さん、本当にありがとうございます。