日本の精神科医療の現実①

2014年2月11日の読売新聞に、こんな記事があった。

 

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(以下引用:読売新聞 2014年2月11日)

精神科の薬を一度に大量に服薬した患者の搬送を受けた救急医療機関が、2012年は全国で少なくとも156病院に上り、うち約3割にあたる46病院は年間50件以上搬送されていることが、読売新聞の調査でわかった。
服薬したのはいずれも医療機関でしか処方できない薬で、抗うつ薬、睡眠薬などの処方のあり方が問われそうだ。
昨年11月、全国の救命救急センターと日本救急医学会の救急科専門医指定施設の計498病院にアンケートを送り、164病院から回答を得た(回収率33%)。大量服薬患者を年間100件以上受けている病院も10病院あり、最も多い病院では約500件と回答した。
うつ病で処方される三環系抗うつ薬では大量服薬によって1年間で計5人が死亡したほか、52人に不整脈、23人に長時間にわたるけいれんなど、命に関わる症状が見られた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140210-00001105-yom-soci

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俺が本気塾を通して関わってきた女性にも、

こういった向精神薬の大量服薬を繰り返しているひとがいる。

 

「今から死ぬ」というメールを受け取ったうちのスタッフが

自宅にかけつけて119番通報したり、

大量服薬した状態で行き倒れ、道行くひとが救急車を呼んでくれたりと、

毎回、救急搬送によって救命救急センターに運ばれて、一命をとりとめている。

 

先日も、大量服薬の結果、意識を失って耳から血を流したと言う。

向精神薬や睡眠薬を100錠近くも飲んだそうである。

だいたい、飲酒をして酩酊状態のときに、そういうことをやる。

 

彼女の場合、この行動の根本には、

「他人に関心をもってほしい」という愛情確認がある。

生育歴や家族背景も複雑なので、同情の余地がないわけではない。

 

しかし、緊急性の高い救命救急センターを、

こういった理由で利用することは、

いかがなものかと思わざるをえない。

 

記事には、「大量服薬患者を年間100件以上受けている病院は10病院あり、

最も多い病院では約500件と回答した」とある。

回答率33%のアンケートで、この数である。

 

この日の読売新聞では、関連記事として

「大量服薬招く 安易な処方」にも触れている。

精神科医から救急医に転身した北里大学病院救命救急センターの教授が、

「処方する医師の側に大きな問題がある」と、断言しちゃっているくらいだ。

 

現場を見ていれば分かることだが、

日本の精神科医療は、薬物治療が中心であり、

精神療法については、おざなりにされている。

なぜなら、精神療法中心では病院が儲からないからである。

 

中には、それこそ3分診察で薬だけくれる医師、

患者が望めば、多剤大量処方をする医師がゴロゴロいることは、

俺も患者やその家族から、耳にタコができるくらい聞いている。

 

もちろん、薬物治療により病状が改善する患者もいる。

だが、大量服薬による救急搬送がこれだけ多いという現実を考えたときには、

依存症の患者などについては、治療薬の処方の仕方はもちろん、

診療点数等の見直しなども、必要なのではないだろうか。

 

大量服薬の危険のある患者には、はっきりと多剤大量処方を断り、

向精神薬への依存に対して、丁寧な精神療法を行う。

これは、決して不可能なことではない。

 

現に俺は、そういった治療を行っている医師を知っている。

まあ、そういう先生ほど、雑居ビルにある小さな診療所で頑張っているんだけどな……。