斎藤環さん、20年近くも姑息なこと「もうやめないや」

 

ここ最近の私の斎藤さんへの発信について、事情を知らない方だけでなく、長く私を応援してくださっている読者の方からも「押川さん、急にどうしたのですか」「斎藤氏の件に偏りすぎではないですか」とご指摘をいただいている。

 

ここではっきりさせておくが、私にとっては「急」な話ではない。斎藤さんは私の仕事がマスメディアに取りあげられはじめた十数年前より、インタビューや文字媒体、パブリックの場において、民間の移送会社を敵視し、暴力の行使や拉致監禁による移送をしているかのような発言を繰り返してきた。

 

そもそも民間の会社がおこなう移送サービスについては、賛否両論あるものだった。1997年には、朝日新聞が「警備会社が家族の依頼で病識のない精神障害者の強制拘束移送を行っている」という記事を掲載し、厚生省(当時)が実態調査に乗り出した結果、1999年に精神保健福祉法の改正が行われ、第34条(医療保護入院等のための移送)が制定された。

 

当時、強制拘束移送を行う闇業者の存在があったことは事実であり、斎藤さんは民間病院の勤務医であったことなどから、問題提起したのだろう。しかし私自身は、当初から強制拘束を否定し、日本で初めての説得による移送サービスをおこなっていた。斎藤さんの中傷の対象には当たらないはずだが、氏の発言の中には、私に向けられたものも多々あった。ただし、直接、議論を投げかけられたわけではない以上、長く黙してきた。

 

ところが今年5月8日、斎藤さんは自身のツイッターにおいて、私を名指しし、「この移送代行サービスが説得で入院をさせているとかいうホラ話は信用出来ない。」、「一件でも医療保護か措置があったら移送に暴力が使用されているはず。」など、説得移送は虚偽で、あたかも暴力を用いて移送を行っているかのように発言した。言ってみれば、私は斎藤さんから、「犯罪者」と断罪されたのだ。

 

多くの方は、私こそが強者(ヤンキー上がりのならず者)であり、斎藤さんは弱者(常識人)、そう思うだろう。だが考えてみてほしい。斎藤さんは精神科医(国家資格保有者/プロ)であり、筑波大学教授(研究者・教育者)という準公人でもある。対して私は、組織にも属さない、何の資格もない、助成金ももらっていない、一民間人だ。

 

ライセンスをもつボクサーが一般人を殴れば罪がより重くなるのと同様、公的な肩書きをもつ人物が発する言葉には、民間人には太刀打ちできない重みと威力がある。このことについては、斎藤さん自身、「一般にボランティアや無資格者による善意の支援は、失敗した場合の責任を法的に問えないという問題がある(プロなら問える)。」(2017年7月26日のツイートから一部引用)と、その違いを認めている。

 

ついでに言うと、斎藤さんは無資格者やボランティアがご自身の領域に立ち入ることが心底気に入らないようだが、国の推進する地域移行・地域定着は、地域住民の善意と行動がなければ成り立たない。社会保障が破綻目前のいま、多くの【無資格】である地域住民を巻き込んだ支援体制を目指しているのである。斎藤さんの発言は、あまりにも時代遅れだ。中には、斎藤さんのような高名な方にツイッター上でつるし上げられ、心身ともに追い込まれている民間の支援者もいるのではないか。

 

私は、相手がどんなにエラかろうが、逆に不器用に生きている人だろうが、同じ人間だと思っている。その発言が、私という人間への単なる誹謗中傷であったならば、黙していたことだろう。だが今回、斎藤さんは、私や私の事務所がこれまで取り組んできた「精神障害者移送サービス」という仕事を、公に「違法」であるかのように発信した。これは私個人の問題では収まらない。

 

この発言を看過してしまえば、私に依頼をした「家族」も「犯罪者」であり、私に指導・協力をしてくれる方々もまた、「犯罪に加担した者」と見なされることになる。その中には、精神科医や医療従事者、メンタルヘルスの専門家、弁護士等の方々もいる。私の精神医療における師匠である糸井孝吉先生のことは、斎藤さんの前任者である司法精神医学の権威もよくご存じだ。斎藤さんも知らぬはずはあるまい。

 

もっと言えば、私はこれまでに幾度か、「複雑対応困難な患者の移送」に関して公的機関から講演に呼ばれている。また本の執筆やテレビ出演もおこなってきた。それらの機関までもが、「犯罪者」を取りあげたということになる。

 

そしてなにより、私が携わってきた患者さんの存在はどうなるのか。斎藤さんの今回の発言に私が黙することは、そういった方々への侮辱をも認めることである。だからこそ私は決断し、代理人を立て、斎藤さんに通知書を送達、正式な回答を求めた。しかし未だに、回答はいただけていない。

 

そもそも斎藤さんは、病識がなく未治療の状況にある患者さんや、症状が重篤でありながら治療を拒否している患者さんの医療へのアクセス(移送)について、どう考えているのか。私が今年2月、日本の司法や精神医療の最高権威者が集まる研究会にゲストとして招聘されたのも、精神保健福祉法に移送の条文はあってもほとんど執行されておらず、医療へのアクセスの問題が相も変わらず課題として残されているからである。

 

斎藤さんは、精神科病院への入院治療を「悪しき収容主義」と批判し、措置入院にも反対の姿勢を示しているが、病識がなく複雑対応困難な患者さんほど、まずは医療につながらないことには、国が目指す地域移行・地域定着のスタートラインにさえ立てないのである。

 

医療への公的なアクセス手段がないうえに、早期退院、地域移行が進められた結果、障害を理由とした家族間殺人が相次いで起きている。今年4月には、読売新聞が「孤絶 家族内事件」として、我が子のひきこもりや障害に悩んだ親が子供に手をかける事件をシリーズで追っている。もはや重大な社会問題だ。

 

先日も、医系技官である厚労省キャリアが、精神科通院歴のある弟に刺殺されるという事件が起きた。被害者の女性は、精神・保健課長を勤めたこともあり、患者さんの地域移行にも携わってきた。非常に痛ましい事件だが、いわばその道のプロにとっても、情緒危機(エモーショナルクライシス)の状態にある患者さんの対応は難しいということを、図らずも証明したのではないか。

 

私は、強制拘束を否定するところから、この仕事を始めた。病識がなく症状の重い患者さんの人権を守る唯一の手段が、私にとっては説得だったのだ。説得移送があったからこそマスメディアも、私という人間を媒介に、世の中に問題提起をすることができた。

 

少なくとも移送の現場に関しては、斎藤さんよりも場数を踏み、現実を見てきた。毎回必ず、事前に保健所や警察、医療機関等に相談に赴き、必要に応じて立ち会いもしてもらっている。本来、斎藤さんにとやかく言われる筋合いはない。

 

そして私は徹頭徹尾、医療へのアクセス(移送)は、民間に委ねられるのではなく、公的機関によるプロフェッショナル集団が担うべきだ、と言い続けている。

 

いっぽうで、斎藤さんが牽引してきたひきこもり対策や、「入院治療や措置入院=悪」であるかのような論調は、明らかに、医療へのアクセスに関する議論を遠ざけてきた。第34条の移送制度は強制拘束が基本であり、ただでさえ二の足を踏んでいるところに、斎藤さんの発言が追い打ちをかけているとも言える。

 

私のような民間の移送会社をつるし上げることで、医療へのアクセスの問題をまるで必要ないもののように扱うことは、「命」の議題から遠ざかることに等しい。第34条の執行を阻止することにもなる。そのことにより、どれだけの患者さん、そしてその家族を見殺しにしてきたのか。

 

メンタルヘルスに関することは、法律や制度も含め、非常に分かりにくい。多くの一般市民は、「著名な精神科医」というだけで斎藤さんの発言を信用するだろう。だからこそ、発言には慎重でなければならず、必然的に、重大な責任が伴う。

 

斎藤さんが「自分はマスメディアに影響力を持ち、発信力や発言力がある」と豪語しているという話も、当のマスメディア関係者からよく耳に入ってくる。それだけの力があるなら、私をとっととマスメディアから追放すればいい。私はハナからマスメディアを意識して人生を生きてはいない。そもそも斎藤さんのようにマスメディアに出演したり、取材を受けたり、イベントで顔を売るほど暇はない。なによりも己の身の丈は十二分に理解している。

 

「医療へのアクセスこそ公的機関が責任を持ってやるべきだ」という私の考えにブレはない。それが私のゴールであり、斎藤さんに言われなくとも、さっさと表舞台から消える。

 

以上、私は改めて、斎藤さんに正式な回答を望む。

 

ここへ来て斎藤さんは、自身のSNS上で「DVT(及び合併症)を発症して救急搬送され、9日間ほどの入院を余儀なくされました」などと発信している。私は病気の方々に携わる仕事をしている人間だ。わざわざ家族の話まで持ち出すほどのご病気についてはお見舞い申し上げるが、その間も、そして昨日も、氏のツイートは更新されている。私への回答を先延ばしにする理由にはなるまい。

 

 

(下記は8月13日のツイート)

 

上記FBなどの言動は、不祥事を起こした政治家を彷彿とさせる。机にいて上から目線でモノを言っている人間が逃げる時の常套句ではないか。さもなくば当局からの捜査逃れかと、一般の方々の誤解すら招きそうだ。私を含め平場ではたらく人間は、権力ある者から追い込まれても、病気がどうのこうのと逃げることなどできない。

 

ここは世界の斎藤さんだ。人間としてまた男としての気位と誇りを持って、これ以上、みっともない姿をさらしてほしくない。私に対しての誹謗中傷は甘んじて受けるが、私や私の事務所を「犯罪者」と断罪したことについては、回答書を出せないのであれば、斎藤さんの代理人弁護士から、潔く謝罪の文書を出してくれればいい。

 

私には命ある限り守らなければならないものがある。何よりも携わっている患者さんの尊い命。そしてその家族の尊い命だ。私が謝罪をしてほしい本当の相手は、彼らと、彼らのために今なお協力を惜しまずにいてくれている多くの方々である。さすれば、私は男として潔く、この件は水に流してやる。

 

最後に、糸井先生の論文からこの一文を贈る。

 

「精神病質者の問題に関し、自分では何もせず、被害者や患者の家族を見殺しにしながら、特殊な領域、つまり犯罪精神医学の分野で苦労している精神科医を誹謗中傷する人々をたくさんみてきましたが、今日でもその風潮は残っているように思います」

引用:「覚せい剤精神疾患治療の覚書―精神病質者に対する私の接し方―」(平成14年5月18日の卓話原稿)。

 

この分野に携わる人間は、それぞれのやり方で「命」を護ることを最優先に考えていくべきであり、それ以外の方々はどうぞ無用な誹謗中傷などなさらぬよう、お願いしたい。

 

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