結婚詐欺①

この間、前科歴のある詐欺師と話をする機会があった。

結婚詐欺を筆頭に、女性を利用した詐欺を繰り返してきた男だ。

 

A(仮名)は、俺のことをヤ○ザと思ったようで、

初対面なのにけっこう正直に、いろんなことを教えてくれた。

ここには書けないこともあるのだが、まあ、すごい内容の話であった。

 

Aは、「女を落として利用するのは簡単です。

ただ、『結婚』を匂わせる言葉を言えばいいのです」と豪語する。

 

「結婚」と言っても、正式にプロポーズをするわけではない。

付き合い始めの段階で「俺もそろそろ結婚したいな」や、

「結婚を前提に付き合おうか」、「君みたいな子と結婚したい」…といった、

あくまで「結婚」を匂わせるセリフを吐いておくのである。

 

それを補完する行動として、早いうちに自分の親や兄弟に会わせる。

家族も詐欺の一味なので、適当に愛想よく対応してくれる。

そうするとプロポーズなどしなくても、女性のほうが勝手に

「ちゃんと親に紹介してくれるなんて、彼は真剣に結婚を考えてくれている」

「誠実なひとだ」と思い込んでくれるのだという。

 

Aはさらに続けた。

「女は『結婚前提』と思い込んだとたんに、

来るべき将来に備えて、男に金を遣わせないようにしてくれるんです。

食事に行っても進んで割り勘にしてくれるし、

全部、払ってくれることすらある。

住んでいる家にも、食器や家電などいろんなものを、

勝手に持ち込んでくれる。

セックスも簡単にさせてくれます。

まったくお金をかけずに、女と遊ぶことができるんです」

 

もちろん、すべての女性に通用するわけではない。

Aが狙うのは、「25歳を過ぎていて、そこそこの収入を得ていて、

なおかつ顔や見た目は“並”クラスの女性」だ。

この層にいて、「結婚したい、子供を産みたい」という願望がある女性は、

いとも簡単にAの手口に引っかかるというのである。

 

逆に言えば、結婚に対する焦りがまだない25歳以下の女性や、

美人・可愛いと男にモテてきた女性は、騙しにくい。

また、一人でも生きていけるような、仕事ができる高収入の女性になると、

詐欺行為がばれたときの反撃がすごい(警察に突き出されるなど)ので

近寄らないようにする。

 

それにしても、そんなことを繰り返していて、

相手の女性から「子供ができたから責任をとれ」と言われたり、

別れる際に揉めたりしないのだろうか? 

俺が尋ねると、Aは答えた。

 

最初に自分の親兄弟に会わせることで女性は、

「きちんとした親(家族)なんだ」「私に対してきちんと段階を踏んでくれるひとなんだ」と思い込み、

たとえば、結納や結婚式、披露宴など…

順番や手続き、段取りをきちんと経ていかなきゃ、と考えるようになる。

だからこそ、出来ちゃった結婚になどならないよう、

女性のほうが、率先して気をつけてくれる。

 

また、別れたくなったときには、

適当な理由とともに「まだ結婚はできそうにないなあ」と言えば、

女性のほうも早く結婚することが最優先なので、

「じゃあ次」とばかりに、後腐れなく去っていくのだという。

 

Aはそうやって、今まで何十人という女性に近づき、

結婚をエサに金品を貢がせてきた。

それだけでなく、詐欺の片棒を担がせたりもした。

 

どういうことかというと、

女性のなかには、「結婚前提」という言葉だけで身内の感覚になり、

Aがやっているほかの詐欺に、手を貸してくれるようになるひともいる、というのだ。

「(未来の)夫を守らなくちゃ」という気分になってしまうのだろう。

Aが逮捕される段になっても、Aがやっていた詐欺専門の会社を守ろうと、

金を貢いでくれた女性までいるというのだから、驚きである。

 

こうしてみると、「結婚」という言葉や概念、システム自体に、

恐ろしいものを感じてしまうな。

もちろん、男が女を騙すパターンだけでなく、

女が「結婚」をエサに、男を騙すパターンもある。

 

それにしても、こういうことをする男は、

みごとに似たような風貌、雰囲気を醸し出している。

Aも、ちょっとしたイケメンだし、物腰も柔らかい。

最初に就職した先は、誰もが知っているような大手企業で、

大学もけっこういいところを出ている。

俺とAが並んでいたら、99%の人が、

「押川のほうがヤバい人間だ」って言うだろう。

とても、前科があるような人物には見えないのだ。

 

そして、もうひとつ、こいつらに共通しているのは、

自分の母親に対してだけは、優しさを見せるところだ。

Aも、「お袋には申し訳なくて」とか言って、涙を流していたぞ。

さんざん女性を食いものにしてきたくせにな。

 

Aは最後に、そのソフトな口調で、こう言った。

「今の時代、金を握っているのも、金を使うのも、結局は女ですからね。

でも『結婚』という囁きひとつで、

その女の財布も股も、開かせることができるんです」

 

今現在、「結婚したい」と焦っている女性は、

どうか、Aのような男に騙されないように注意してほしい。

そのためにも、「結婚」というフィルターをはずして、

一人の人間として、相手のことをきちんと見定めるべきだ。

 

ちなみに俺は、まさにAのような男に騙された女性を知っているので、

さっそく彼女に電話をして、Aのやり口を教えてあげた。

彼女は実体験に基づいたすばらしい感想をくれたのだが、

長くなるので、それについては明日のブログに書く。

 

俺は今回、女性たちに注意を促したくて、Aの手口をあえて公開した。

良識あるブログ読者の皆さんは、くれぐれも悪用しないでくれよな!

Aだって結局は何度もお縄になっているわけだし、

ちっとも美しくない生き方だぜ!