幸せの前借り

スキージャンプの高梨選手は残念だった。

 

日本どころか世界中からも「金」確実と言われていた彼女だが、

俺は、もしかしたらメダルは厳しいんじゃないかと予想していた。

 

結果が分かったうえで言うなんて、後出しだと思われちゃうかな?

 

もちろん、高梨選手が才能も実力も努力も兼ね備えた

素晴らしい選手だということは、素人の俺でも分かる。

 

ただ、彼女がW杯などで実績を積むにしたがって、

彼女の周囲がえらく浮き足立っていった。

それは、ハタで見ているだけの俺にも、分かるくらいだった。

 

たとえば、親が焼き肉店を開いて、

高梨選手の名前をつかって、報道陣を呼んでしまったり。

スキー連盟やJOC、マスコミも、

彼女を今回のオリンピックのヒロインにしようとして

勝手に盛り上がっていたしな。

 

俺には、高梨選手の周囲の大人たちが、

金メダルを当て込んで、

前乗りで現金化しちゃっているように見えた。

 

「幸せの前借り」をしちゃっているな、と俺は思った。

常々、「人生は調和だ」と思っている俺には、

すごくバランスが悪く感じられたんだ。

 

結局、高梨選手には、必要以上のプレッシャーがかかったはずだし、

「風」という自然現象を味方につけることもできなかった。

 

それでも世界で4位なんだから、すごいことだけどな!!

まだまだ、未来もあるしな!

 

一方で、スノーボードでメダルを取った二人は、

そこまで騒がれていなかったせいか、

年相応の伸びやかさ、楽しさが伝わってきた。

 

もちろん彼らにも今後は、

ビジネス(金)の話が山ほど舞い込んでくるだろう。

 

彼らは(もちろん高梨選手も)未成年なのだから、

他人事ながら、周囲の大人たちが正しく、

彼ら自身の「幸せ」のために、それを使ってくれることを願うばかりだ。