魔法なんてないのだ!

目先の金や物にとらわれるひとの、いかに多いことか……と思う。

本物の価値というのは、ひとのこころとか、人間のつながりとか

そういう無限大のもののところに、あるのにな。

 

家族の問題を扱っていても、同じことを感じる。

目先の答え、目先の解決策に飛びつく家族(親)が、本当に多い。

 

たとえば、俺の事務所にかかってくる問い合わせの電話でも、

その電話だけで、子供の問題を解決する「答え」を得ようとする親がいる。

 

ちょっと待ってくれ、と俺は言いたい。

 

子供は、突然変異みたいに問題を起こすわけではない。

そこに至るまでには、生まれてからこれまでの

10年20年(あるいはそれ以上)の積み重ねがあるのだ。

 

そこには当然、親の子供に対する躾や、関わり方も含まれる。

たとえ、親が言葉にして教えていなくても、

子供はどうしたって、親の背中、生き様を見てきている。

 

だからこそ、子供の問題行動を解決し、

更生や自立、社会復帰に導くまでには、それなりに時間がかかる。

 

瞬時に解決できるような、そんな魔法、ないんだよ。

 

「保健所にも相談に行った、●●にも相談した」、「もう限界です」と訴える親がいるが、

よくよく聞いてみると、実は電話をかけて話を聞いただけだったり、

一回、相談に行っただけだったり、そういうことがけっこうある。

 

そういう親ほど、肝心の子供に対しても、全然、向き合ってないんだよな。

 

いや、親は「向き合ってきた」「頑張った」と言うんだけど、

俺からすると、子供の反抗や、暴言、暴力を恐れてグダグダになり、

「犯罪はダメや!」「ひと様に暴力を振るったらいかん!」

「(自殺未遂など)身体を傷つけるようなことは、絶対にゆるさない!」

という、とっても重要なことを伝えられていない。

 

何より、「お父さん(お母さん)は、あんたのことを愛してるんだ!」

と、しつこいくらい、子供が根負けするくらい、

伝えたことがあるのかな? と思うよね。

 

とくに10代の子供には、それこそが、魔法の言葉みたいに大事なんだけどな。

 

もちろん、それを言えばすぐに子供が良くなる、と言うわけではない。

そういうやりとりを何度も何度も繰り返すことでしか、解決への道はひらけないのである。

 

目先の答えや解決策ばかり求めること、

それは「楽をしたい」「誰かに何とかしてほしい」という、人間の欲求に他ならない。

 

親がその欲求を最優先にしたときには、

いずれ、もっと大きな代償を払わされることになる。

 

俺はそう思っているよ。