17歳少女暴行死

愛媛県伊予市の市営住宅で、

17歳女性の遺体が押し入れから見つかったという事件があった。

 

 17歳少女暴行死か…36歳女と長男ら逮捕 市は情報把握も通報せず

 

不可解な部分の多い事件である。

 

被害者の女性は、少なくとも1年以上前から、

加害者の女の部屋で半ば同居状態にあったという。

 

加害者側に罪があることは言うまでもないが、

どうしてこうなるまで、被害者の女性がその場にとどまったのか。

被害者の親は何をしていたのか。

近隣住民も含め、周囲のひとたちが事件の予兆に気付きながら

救うことができなかったのはなぜか。

……という疑問を抱いたひとも多いだろう。

 

児相や警察も介入していた以上、

未然に防げる事件であったことは間違いないが、

それでも防げなかったのはなぜだろうか。

 

俺は、「行政の怠慢」などというひと言では片付けられない、

根深いものを、この事件に感じる。

 

俺のところにも、10代の子供を持つ親からの相談は多くあるが、

「友達(彼氏)の家に入り浸っている」

「家出をして、見ず知らずの他人の家で暮らしている」

という話を聞くのは、めずらしいことではない。

 

義務教育課程の中学生くらいまでなら、

「親-学校-児相」の三角形で連携がとれるので、児相の介入も期待できよう。

 

しかしこれが、中学卒業後の年代になると、行政介入のハードルは上がってしまう。

 

高校ともなると、問題を起こすような子供は学校自体から排除されがちだし、

高校にも進学していない無職の状態であれば、なおさらだ。

 

本人が自分の意思でその場にとどまっている以上、

警察は事件性がない限り、強制的な介入はできないし、

児相に関しても、情報収集くらいはしてくれるだろうが、

積極的に介入するようなことはない。

 

むやみやたらに行政を叩くひとたちは、分かっていないのかもしれないが、

こういった家族の問題に基づく相談、通報は、山のようにあるのだ。

だからこそ、対象となる本人に「介入してほしい」という同意があるならともかく、

そうでない場合には、「法律」や「人権」等に細心の注意を払って判断しなければならない。

 

それを飛び越えてまで動いてもらえるか、助けてもらえるかどうかは、

やはり、当事者である家族の本気度にかかっている。

 

そういう意味では、今回の事件で被害者となった女性は、

家族(親)との関係にも問題を抱えていたのだろうし、

「別の生きる場所」として選んだはずの居場所で、命を奪われる結果となってしまった。

 

俺も報道により詳細を追っている段階であり、真相は分からないが、

こういう事件があると、「しょせんは、低学歴・低収入の層で起きたことだろう」と言うひとがいる。

 

しかし俺は、実感として、そうは思っていない。

問題を抱える10代の子供の親には、高学歴・高収入の持ち主も多いのだ。

あるいは高収入とまではいかなくても、

家族が暮らしていけるだけの収入のある家庭は、少なくない。

 

つまり「経済力」はありながら、「人間力」「親力」がないばかりに、

子供との健全な親子関係を育めずにいる。

 

こうして育てられた子供は、ひたすら愛情を求めてさまようから、

進学や就職よりも、異性との付き合いを優先したり、

他に庇護してくれる大人に出会えば、簡単についていってしまう。

 

その結果、事件に巻き込まれるようなこともあるだろうし、

女性であれば、驚くほど低年齢での妊娠や出産に至ったりしている。

 

親の代からの負の連鎖でもなんでもなく、

いとも簡単に「低学歴・低収入」層に陥ってしまっている子供たちが、

とても増えているような気が、俺はしているのである。

 

子供をもつ親は、今回の事件を、決して対岸の火事ではなく、

誰にでも起こりうることだと認め、

今一度、子供との関係を見直すべきではないだろうか。

 

お盆休みのさなかで、忘れがたい夏の思い出を作った親子もいるだろう。

その片隅で、誰からも救ってもらえずに亡くなった無辜の命があることを、忘れてはならない。