Don’t think! Feel!

俺の仕事を簡単に言うと、「人に会って話をする」ってことに尽きる。

もともとは、病識のない精神疾患の人を、「医療機関で治療を受けましょう」と説得する仕事(精神障害者移送サービス)に始まり、この十年くらいは、違法薬物、詐欺、傷害、窃盗、ストーカー…… なんていう犯罪を犯した人と、話をする機会も増えている。

 

「なぜ押川さんはヤバい人たちを説得できるんですか?」っていうことを聞いてくる人がたまにいる。シンプルだけど、すごく答えにくい質問だよな(笑)小説家に、「なぜ小説が書けるのですか?」と聞くようなもんだ。

理由はいろいろあるような気がするし、俺の持って生まれた性格とか、育ってきた環境も大きいのかもしれない。だけど、俺ももっとシンプルに答えを出してみると、結局、俺ってけっこうな、どアホなんだよね。アホがいくら頭を使っていい答えを出そうとしても、そう簡単に浮かぶはずがない。

 

ブルース・リーじゃないけど、やっぱりアホが持てる最大の武器は、

「Don’t think! Feel!」

なんだよ。

感じること、相手を感じることなんだ。自分が感じたそのままを言動に移して、相手とコミュニケーションをとっているだけなんだ。

 

俺がいろんな人を見てきて思うのは、この感性ってやつは、親に強要されてしこたま勉強したり、見栄だの金だのを目的に、無理していい会社に入ったりすると どんどんすりへっていくんだ

もう何年も前から、コミュニケーションがとれない若者が増えたとか、うつ病の人が増えたとか言われてるけど俺に言わせれば「当たり前だよ!」。この国はずっと、学歴至上主義、大企業至上主義でやってきた。ようは、感性をすりへらす教育しかしてこなかった、ってわけだ!

 

「お前は字を書いてもダメ! 話をしてもボンクラやから、身体で描けっ!」。これは、俺がガキの頃、母親にさんざん言われた言葉なんだけど、自分でもずっと、そう思いながら生きてきたし、これからもそうやって生きていくしかないんだよな。