当事者の声

毎日、たくさんのコメントをありがとうございます。

 

今日は、俺自身のこころにしっかり刻むという意味で、

当事者家族からのコメントを、改めてここに記しておきたい。

 

-----------------

 

病院での治療方はありません。激しい気持ちを和らぐのを待つだけ。そして事件を待つしか術がない状態でした。 これだけ危険とわかっていて事前に防ぐ機関がないなんて…絶望感しかありませんでした。 どうか公的機関を造って下さい。 切なる願いです。

 

-----------------

 

20年以上、家族で苦しんでいます。 行政、もちろん精神病院にも幾度となく通い結果、「事件にならなければ関与せず、病院も本人の意志なくして介入できず」に諦めと失望でもう、どうしてよいか考えることもできない状況です。家族みんな限界です。

 

-----------------

 

家族の相談で何度も公的機関に通っていた時期がありました。しかし、幾度もの門前払いで諦めばかりが募り…。誠心誠意、話してはいたのですが本人を医療機関への一点張り。最後の最後で「家族の誰かが死なないと何もすることはないと言うことですか?」と、言った私に「結果はそうなります」と、返答されました。以降、行政に行くことはなくなりました。

 

-----------------

 

もちろん、行政機関の中にも、一生懸命やってくれる方はいる。

 

しかし、全体を見たときには、速やかに、かつ安全に介入するための仕組みもなく、

「地域によっては」「運が良ければ」対応をしてもらえる…

といったレベルでしかない。

 

それに関して、当事者家族ほど、なかなか声をあげられず、

声をあげても届かない、という現実がある。

 

以下は、だいぶ前の記事になるが、朝日新聞からの引用である。

精神障害者から暴力、家族の葛藤 研究者「6割が経験」

精神の障害を抱えた子どもや兄弟から暴力を受けた経験がある――。研究者などの調査に、障害者の家族の約6割がそんな苦しみを打ち明けた。心中を考えた人も2割ほどいた。精神障害者への誤解や偏見を恐れ、暴力について口を閉ざす人は多い。4日、さいたま市で家族が集い、思いを語り合った。専門家は「障害者やその家族を孤立させず、社会で支える態勢が必要だ」と指摘した。

東京大学大学院の蔭山正子助教(地域看護学)らの研究チームが昨年7~9月、おもに埼玉県内に住む精神障害者の家族768世帯に質問状を配布。346世帯466人から回答を得た。4日、さいたま市であった同県内の精神障害者家族会の集会で蔭山助教が結果を報告した。

家族の約6割が当事者から暴力を受けたと明かしたほか、16%は「刃物を向けられたり、刃物で傷つけられたりした」と打ち明けた。「一緒に死にたい」「本人に死んでほしい」と思い詰めたことがある人もそれぞれ2割いた。

蔭山助教は一部の家族から直接話を聞いた。障害者の両親たちは、暴力について「突然くる」「コントロールが利かない」などと答えた。「家族の恥」として暴力を隠したり、周囲から「家族なんだから耐えなさい」などと求められたりした悩みも語った。「子どもを犯罪者にしたくない」との思いから、暴力を家庭内で抱え込んでしまうケースも多いといい、蔭山助教は「暴力が密室化している」と指摘する。

家族の恥と感じる家族ほど精神状態が良くなかった。蔭山助教は「家族や本人が外とつながることが大切」と話す。また、「精神障害者の暴力は、適切な医療や支援があれば対応や予防ができる問題。急性期や症状悪化時の支援態勢の整備が必要だ」とも訴える。

精神障害者の家族をめぐっては昨年6月、東京都内に住む男性が、障害を抱えた三男の暴力に悩み、殺害する事件があった。東京地裁立川支部は「相当やむをえない事情があった」として男性に執行猶予付きの有罪判決を言い渡した。(塩入彩)

■「相談できる場ない」

「命の危険を感じたことがある」「親が相談できる場はない」――。この日の家族会の集会では、切実な声が続いた。

70代の女性は、50代の息子が30代後半で統合失調症を発症。父親に物を投げつけるなどの暴力も始まった。保健所や警察に相談に行ったが、「対応するのは難しい」とたらい回しに。暴力から逃げるための避難先を探したが、行政などからは「夫婦間の暴力(DV)ならあるが、子どもからの暴力から避難する場所はない」などと断られた。そんな体験を打ち明けた。

別の参加者の男性(78)は昨年末に40代の息子から殴りかかられ、十数針縫うけがを負った。しかし、息子は過去に病院で身体を拘束されたトラウマから入院を拒否。男性も息子を思い、「自分がけがするだけなら」と受け入れてしまったという。

この日は、昨年6月の東京都内での「三男殺害事件」も話題に。「うちも事件になってもおかしくない状況。早期に行政などが介入する制度を整えてほしい」などの声が上がった。

調査に参加した埼玉県立大の横山恵子教授(精神看護学)は「精神障害者と暴力の問題は長年タブー視されていた」と打ち明ける。今回の調査では、当事者が家族以外の他人に暴力を振るったケースは1割未満と少ないこともわかった。しかし、社会から「精神障害者は怖い」とレッテルを貼られることを恐れる家族は多く、今回の調査に反対する家族もいたという。

横山教授は「暴力の経験は、思い出すだけでもつらいが、多くの家族が協力してくれた。この結果をきちんと医療や行政の関係者に伝えていきたい」と話す。

引用:朝日新聞デジタル 2015年3月7日

実際のところは、こうして専門家が実態調査をし、

メディアに向けて声をあげても、なかなか広く社会には届かない。

 

これは、専門家の多くが、家族の思いは受け止められても、

現実感=リアルさを伴うかたちで、

社会に訴えることができていないからだと思う。

 

専門家たちが、危ない現場に実際に赴き、

自身が殴られたり蹴られたり、唾を吐かれたり、刃物を向けられたり……

言ってみれば「悪役」となり身体を張る、

そういった経験をしていない証拠でもある。

 

そこで「悪役」と言えば! 不肖押川の出番だ。

 

俺が行政機関にいくと、だいたい嫌な顔をされるのだが、

専門家こそ、その専門性をフルに活かすべく、

この俺をうまく利用してくれればいいのに、といつも思う。

俺がブサイクでアホでヤクザにみえるからと言って、

最初からNOサンキューじゃあ、もったいないと思うぜ。

 

俺は昔、剣道をやっていたので、今の自分の役割も、

剣道になぞらえて考えることがある。

 

俺は、団体戦では必ず先鋒だった。

後に続く次将・中堅・副将・大将とつないでいくために、

身体の限界がくるまで、どれだけ相手を打ち抜くか。

役割はそれだけだったのだ。

 

精神保健の分野では、

次将・中堅・副将・大将を担える専門機関はたくさんあるが、

その連携がうまくいっているとは思えないし、

そもそも、先鋒を担えるスペシャリストがいない。

 

たくさんの家族が、もう待ったなしの状況にある以上、

俺は一個人でも戦い抜くしかないと思っている。

そして今後、先鋒を担えるスペシャリスト集団を設立するためには、

広く一般の方々の応援がどうしても必要だ。

 

家族を助けるためだけに、そうするのではない。

 

家族のSOSに真摯に向き合うことで

本人を、医療を含め適切な環境につなげることができ、

万が一の事件や事故を、未然に防ぐことにもなる。

 

それが、安心して暮らせる社会であり、また

安心して子供を育てられる、子供を守れる社会ではないだろうか。

 

表紙