【ストーカー】女子大生刺傷事件 尾木ママ、俺に話を聞きに来い!

東京で、芸能活動をしていた女子大生がファンの男に刺され、

意識不明の重体となる事件が起きた。

残虐な事件に胸が痛む。

女性の一日も早い回復を、心から祈りたい。

 

この事件に関して、尾木ママこと教育評論家の尾木直樹先生が

「もっともっと早く本気で警察も動いて欲しいです!

いつも繰り返してある気がします…」

「ストーカー規制の強化 実体化 急いで欲しいです!」と、

ストーカー規制法の見直しを求める内容のブログを書いている。

 

こういった事件が起きると、矛先は必ず警察に向かい、

「規制を強化しろ」という声があがる。

 

しかしその意味を深く考えている意見には滅多にお目にかかれないし、

追究して報じるメディアも、ほとんどない。

 

俺は「『子供を殺してください』という親たち」の中で、

ストーカーに関しても見解を述べた。

 

相手が家族か異性かの違いはあるけれども、

加害者側の人間が、ときに殺意までもって相手に執着する様は、

俺が日頃から扱っている家族の問題と、本質的にとても近しい。

 

だからこそ分かるのだが、事件化するほどのケースにおいて

加害者が相手への執着を簡単に捨てるかと言われたら、そんなことはない。

仮にその被害者へのストーカー行為はやめても、

また別の人間に対して、執着する例もある。

 

ちなみにストーカーに関して、警察庁の発表によれば、

つきまといを禁止する警告を受けたり、逮捕をされたりした加害者の一割超は、

半年以内に同様の行為を繰り返すという。

 

とはいえ「ストーカー規制法」では、つきまといなどに対しての罰則は、

6か月以下の懲役、または50万円以下の罰金刑である。

警察は、警告書による警告ができ、警告に従わない者に対しては、

都道府県公安委員会が禁止命令を出すことができる。

この命令に従わない場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金となる。

 

仮に、加害者の逮捕に至ったとしても、罰金や短期の刑期であれば

被害者側の身の危険や心理的な恐怖は、なかなか消えないだろう。

 

かといって、警察が24時間体制で身辺警護などできるはずもなく、

ストーカーによる事件を未然に防ごうというのであれば、

より踏み込んだ対応が必要となってくる。

 

現に、警察庁や警視庁では、根本解決を図るため、

加害者に対して専門機関で治療を促す仕組みに、

予算を計上して取り組んでいる。

 

「警察が警護を強化すればいい」「速やかに捜査をすればいい」

という意見も、散見される。

 

しかし何度も言っていることだが、こういった相談が、

毎日、いったいどれだけ警察に寄せられていることか。

 

ストーカーだけではない、俺の携わっている家族の問題だって、

行政や保健所は、家族に対し「何かあったら警察に相談を」と告げている。

 

もっと言えば、俺の事務所への問い合わせには、

近隣トラブルに関する相談も、よくあるのだが、

その大多数は、近隣住民が精神疾患を抱えていて、

ゴミ屋敷や騒音のトラブルがあり、困っているという相談だ。

 

しかし中には、相談内容が支離滅裂で、

つまり、問い合わせをしてきたその人自身が、

精神疾患に罹患しているだろうと思われるケースも、多々ある。

 

統合失調症の症状である被害妄想や、幻覚(幻聴)により、

「隣の住民から嫌がらせを受けている」「盗聴されている」

などと感じていて、「隣の住民を逮捕してほしい」と訴えるのだ。

そういう方々の多くは、「警察にも相談しているのだけど」と言う。

 

つまり、警察には、ストーカーをされている被害者や、

子供の家庭内暴力などに悩んでいる家族だけでなく、

精神疾患を抱える当事者からの相談・通報も、行われているのだ。

 

警察署に相談にきた当事者に関して言えば、

精神保健に関する主管行政である保健所にバトンタッチするしかないのだが、

そこから先、保健所の積極的な介入により、

当事者がスムースに医療につながれているかというと、

そうとは言い難い現状がある。

 

尾木ママの言うように、これ以上、

「もっともっと早く本気で警察も動いて欲しいです!」

と言うのであれば、どこまでが警察の業務の範囲かを明確にした上で、

その業務に見合うよう、人員や予算を増やす、制度を変える、

といった負担を、我々国民も、担わなければならない。

 

俺は、他人様の言動にあれこれと物申せる立場ではないが、

今回ばかりは、尾木ママほどの著名人にこそ、短絡的感情的な意見ではなく、

もっと現実を踏まえた発言をしてほしい! と思った。

解決策が分からないというのであれば、「俺に話を聞きに来い!」 と言いたい。

 

ちなみに、海外では、治安を望む国民の民意を反映し、

犯罪や危険な行為を起こすと予測される人物に対して、

警察が介入し、強制的に施設に入所させるといった、

いわゆる予防拘禁を行っている国もある。

 

日本がそれを求めるかと言えば、そうはならないだろう。

 

とすると、現実的な解決方法として、

俺が提唱しているプロフェッショナル集団が、ここでも役に立てる。

加害者に接触し、必要に応じて医療につなげるのだ。

 

なぜ医療かといえば、以前のストーカー事件のときにも書いたが

加害者が、事件を起こす前に、うつや不眠、被害妄想を訴えていることもある。

過去の事件では、家族の要請により保健所が介入していたケースもあった。

 

今回の事件でも、容疑者は女性にわいせつな内容の本を渡したり、

一ヶ月ほど前には、自分の自宅マンションのドアに

「他人の郵便物を見たり盗ったりするのは犯罪です」などと書いた紙を張り、

郵便受けをテープでふさいでいたという報道もあった。

 

そういった加害者に対して、医療の側面から介入する。

それが、事件を防ぐためにこの国でできる、最大限の対応だ。

 

医療側も、ストーカーをはじめいわゆるパーソナリティ障害の患者を、

「薬が効かないから治療の対象外」として切って捨てるのではなく、

彼らが心身の平安を取り戻し、社会と健全に関わりをもって生きていけるよう

どうやって治療や支援を行っていくか、考えていかねばならない。

(もちろん、治療をすれば必ず良くなるという単純な話ではないが)

 

警察にばかり問題を押しつけても、限界がある。

今、多くの国民が求めている「安全」や「安心」は、

警察と医療の連携があってこそ、手に入るのだ。

 

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