川崎中1男子殺害事件①

川崎で中学一年生の少年が殺害された事件だが、

非常に壮絶で陰惨な内容で、胸が痛くなる。

 

被害者の少年と付き合いのあった年上の少年に対して

任意の事情聴取をするようだが、

少年は万引きを強要され、断ったら殴られたとか、

「学校にも行くな」と脅されていたとかいう報道もある。

 

不良やチンピラを越え、マフィアみたいな連中ではないか。

 

「普通に(真面目に)生きていれば、そんな連中とは接点がない。

本人にも悪いところがあったのではないか」と言うひともいるだろう。

 

それはもっともな意見なのだが、

今は、入り口がとても分かりにくくなっている。

 

実際に、俺が携わってきた、事件や犯罪に巻き込まれた若い奴らは、

ほとんどが最初の入り口を見誤り、あっという間に転落している。

 

見るからに不良や、見るからにヤクザといった風貌の人物は減り、

見た目は普通どころかスマートで、優しさすら醸し出している。

そして最初は甘い言葉をささやき、親切な振る舞いで仲間に引き入れるから、

被害にあう方は、すっかり騙されてしまうのだ。

 

今回の少年も、最初は優しい言葉で遊びにでも誘われたのではないか。

遠方から引っ越してきたという事情もあるようだから、

友達ができたと、純粋に喜んだのかもしれない。

憶測でしかないが、そう考えてしまう。

 

友人や学校側は、最近の異変に気づいていたようであるが

相手がマフィアのような少年たちでは、

もはやありきたりな「指導」レベルでは、命を助けることができない。

 

では、子供が何らかの事件に巻き込まれた場合、

親や、周囲の大人にできることは何だろう?

 

俺が常々考えていることは、「関わる人間を増やし」、

「事態をオオゴトにする」ということである。

 

これは、闇雲に騒ぎ立てるという意味ではなく、

学校はもちろん、度合いによっては警察にも相談して、

本人に起きていることをつまびらかにし、保護する体制をとるのだ。

とくに未成年の場合、親が必死になれば、学校や児相なども動かざるをえない。

 

もちろん親にも、転居や転校も辞さないくらいの覚悟がいるが、

相手がマフィアみたいな連中である以上は、

それくらいしないと、子供の命は守れない。

 

それからもう一つは「スピード感」である。

昔と違って今は、短絡的な思考回路の人間が増えているように感じる。

今回の事件でも、少年が道を踏み外させられてから

命を奪われるまでの時間が、あまりに短すぎる。

 

だからこそ、子供の異変に素早く気づくことは絶対条件だが、

気づいたあとに、すぐに介入する、すぐに対応をとる。

常に最悪を想定し、危機回避の行動を積み重ねる。

そのスピード感こそが求められている。

 

中には「そんな大袈裟に騒ぎ立てて……」と言ってくるひともいるが、

友人知人のトラブルほど、子供にとってSOSを発しにくいことはない。

それはもう、わかりきったことなのだから、

周囲の大人が先手を打つかたちで本気の行動を示してこそ、

行きすぎた行動への抑止、歯止めにつながる。

 

これは、俺の仕事にも通じることだ。

 

ときどき、俺のところに相談にきて、

「家庭内暴力で、殺されてしまうかも……」

と差し迫った相談をしておきながら、数日後には

「ちょっと落ち着いてきたので、もう少し様子をみます」

と言ってくる家族がいる。

 

よほどの秘策があるならともかく、

ほとんどの場合において、次はより大きな問題が起きる。

 

現状で、すでに手に負えない状態にあるのだから、

ちんたらしていたら、命さえ、簡単に奪われてしまう。

そういう時代に俺たちは生きているのだと、改めて思わされる。

 

亡くなった少年の冥福を祈りたい。