40代の闇

 

母と祖母を刺した殺人未遂の疑いで17歳長男逮捕 和歌山・御坊市

 

20日午前3時20分ごろ、和歌山・御坊市の住宅で、82歳の女性と46歳の娘が刺された。

 

同居している高校生の長男(17)が110番通報し、警察官が駆けつけたところ、玄関の鍵がかかったままで、凶器の包丁も家の中に残されていて、長男が犯行を認めたため、殺人未遂の疑いで長男を逮捕した。

 

刺された2人は、命に別条はない。

 

調べに対して長男は、「2人のしつけに反発する気持ちがあった」という趣旨の供述をしているという。

 

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またしても、親子間の殺傷事件が起きたようだ。

 

別のニュースでは、加害少年の通う学校が取材に応じていたが、

少年は以前、県内の別の高校を退学したあと、改めて試験を受けて、

今の高校に入学したそうである。

 

また高校側は、少年が「寮に入って自立したい」と話すなど、

これからの方向性について、母親らとの間で意見の相違があったことを認識していた。

 

この高校は、今日から二学期が始まっていたというから、

学校に行くにあたって、親子の間で諍いでもあったのだろうか。

 

この事件については、まだ真相も分からないが、

「40代後半の親に10代の子供」というのは、

俺の事務所への相談でも、増えつつある組み合わせだ。

 

少し前になるが、新潟ではこんな事件も起きている。

 

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70代両親をバットで殴打、殺人未遂容疑で長男逮捕

 

新潟県村上市の自宅で、同居する70代の両親をバットで殴って殺害しようとしたとして、46歳の長男が17日、警察に逮捕されました。

 

殺人未遂の疑いで逮捕されたのは、新潟県村上市の職業不詳・高橋透容疑者(46)です。

 

警察によりますと、高橋容疑者は17日午前0時45分ごろ、自宅で同居している70代の両親の頭や顔をバットで複数回殴って、殺害しようとした疑いが持たれています。両親は顔の骨を折るなどの重傷ですが、命に別状はないということです。

 

事件の後、車で逃げた高橋容疑者は、逃走先の群馬県内で警察に逮捕されました。調べに対し、「俺はやっていない」と容疑を否認しています。

 

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こちらは、46歳の息子が、70代の両親を殺そうとした。

 

この40代(後半)世代は、内面にいろんな噴火材料を持っている世代ではないかと、

同年代の俺は思って見ている。

 

その背景としてあげられるのは、高度成長期のイケイケの親に育てられたことや、

若い頃に、バブルというめちゃくちゃな時代を経験したこと、

就職も引く手あまたの超売り手市場だったこと、などがある。

 

ようするに、何も考えず、努力もせず、ノリで生きていても、

しっかりうまい汁が吸えた時代だったんだな。

 

結果としてこの世代が今、何をやらかしているかについては、

過去にもブログ(時代を狂わす40代)で書いたことがある。

 

もちろん、皆が皆、めちゃくちゃだとは思わない。

しっかり生きている40代もたくさんいるとは思う。

 

しかし俺のような仕事をしていると、親に殺意を抱く40代、

子供に殺意を抱かれる40代の数の多さを目の当たりし、

恐れおののくのである。

 

おそらくそれは、今になって始まったことではなく、

前々からあったひずみが、少しずつ噴出しはじめているのだろう。

 

国全体がふわふわと浮かれまくっていた、

あの時代を思う存分に享受してきた世代だからこそ、

根拠のない「万能感」を持っている人間が多いと、常々感じる。

 

仕事を選り好みして就職ができないのも、

我が子に身の丈以上の成績や生活態度を求めてしまうのも、

根拠のない「万能感」ゆえではないかと、思うのだ。

 

上にあげた二つのニュースでは、事件のあった家の映像も映っているが、

どちらも、見た目は立派な一軒家である。

 

内情はともかく、表向きは、まともな家庭に見えたことだろう。

 

だが俺は、その家の中で育まれた親子関係に、

とてつもなく窮屈なものを感じとってしまう。

 

親を殺そうと思い至るまでには、そうとうな精神のしばりつけがあったのではないか。

精神をしばりつけることは、心臓をしばりつけることと同じだ。

 

とくに地方にいくほど、そのしばりは激しくなる。

見栄やら世間体やら、因習めいたものまで、乗っけられてくるからだ。

 

おまけに地方ほど、家族の問題に関する相談先も少なく、

行政機関も危機意識が薄いことが多い。

 

関東圏は、たしかに、近所付き合い等の人間関係は薄いが、

その分、家族の問題に関する相談先はたくさんあるし、

行政機関なども比較的、動いてくれるのである。

 

それにしても、二つの事件とも、家族の命に別状がなかったことが救いである。

 

だが、一度、殺意を向けてきた子供と、

今後、どう向き合い、親子関係を築いていくのか。

非常に難しい課題である。

 

こういった家族間の殺傷事件ほど、あと追いの報道も少ない。

何が理由で、真相は何だったのか、どうすればよかったのか

知りたくても、なかなか知ることができない。

 

密室化された家庭内で起きた事件が、また密室に返っていく。

夏の怪談より、背筋が寒くなる話ではないか。

 

もし、家族が崩壊しかけているのでは……と、なんとなく不安を感じている方、

これから家族をつくろうと考えている方は、ぜひ俺の著書を読んでくれよな。

 

表紙    押川チラシ