患者さんからのSOS

俺の事務所への問い合わせ電話で、一番多いのは家族からの相談である。

次が、近隣トラブルに関する地域住民からの相談、

そしてもう一つが、精神疾患を抱えるご本人からの電話である。

 

直近の水トク!「THE 説得」の放映後は、

中でも、患者さんご本人からの問い合わせが、とても多かった。

 

内容としては、病識があり、医療にもかかっているのだが、

なかなか改善しない……というものもあれば、

はっきりと病識があるわけではないのだが、

妄想や幻覚に悩まされている……というものもある。

 

「親の育て方のせいで、自分は病気になったので、

押川さんから親に話をつけてもらえないか!」

なんていう相談も、けっこうあったな。

 

いずれも、押川に相談したい、押川に何とかしてほしい、という依頼だ。

 

しかしながら俺は、病識のない対象者を医療につなげる、

というスタイルで仕事をしているので、

基本的には、家族からの依頼がメインとなる。

 

それに、患者さんからの相談に乗り、

適切な治療や心理的アプローチができるのは、

俺ではなく、医師やカウンセラーなど、精神科医療従事者だろう。

 

なので、患者さんご本人からの問い合わせには、電話の段階で、

スタッフができるだけのアドバイスをしつつも、

俺への面談や依頼に関しては、丁重にお断りしている。

 

スタッフから、こういった問い合わせに関する報告を受けるたびに、

俺は、「力になれず、申し訳ない」という気持ちでいっぱいになる。

 

しかしその反面、ご本人から「押川に」とご指名をいただくことは、

俺にとって、何よりも嬉しく、励みになることなのだ。

 

「THE 説得」をご覧になった方はご承知のとおり、

俺のやり方って、ド直球に核心をつくことを言うし、

場合によっては俺も暴れまくり、常にガチンコ勝負だ。

 

テレビ放映があると、毎回のように、2chなどで

「押川ヤクザか」「押川こそヤバイ」などと、ボロクソに非難される。

まあ、そう思うだろうな、と自分でも思っている。

 

で、そういうひとたちは、必ず、

「こんなやり方じゃ、かわいそう」

「かえって心の傷になる」などと、言う。

 

でも実は、俺のところには、その放送を観た患者さんからの

「押川と話がしたい」「押川に何か言ってもらいたい」

という連絡が、いっぱい来るんだよ。

 

これって、いかに彼らが、表面的、偽善的な言葉や態度ではなく、

「本当のこと」を、直球で伝えてほしいと思っているか。

本音で、ナマの人間同士、関わり合いたいと思っているか。

 

その現れだと、思わないか?

 

それに、俺が携わった対象者の中には、

移送の際に、俺がけっこう厳しい対応をしたにも関わらず、

「はっきり言ってもらえて、良かったと思う」

「他人なのに、家族よりも真剣に話してもらえて、嬉しかった」

と、言うひともいる。

 

俺が介入した結果、親子の断絶という結末が浮き彫りになり、

いっときは落ち込んでも、時間を経て

「押川さんのおかげで、親と距離をとることができて、楽になれた」

と、言うひともいる。

 

(もちろん、全員が全員、そうなると言うわけではないが)

 

俺も今までの人生、けっこういろんな方々から

「ありがとう」を言ってもらってきたけど、

この患者さんからの「ありがとう」は、

俺にとって最もこころに沁みる、格別な言葉だ。

ますます頑張っていこうという、未来志向のエネルギーももらえる。

 

そして、既存の考えや、世間でいうところの常識にとらわれて

頭でっかちなやり方で、人間をみてはいけないなあ! 

と、考えさせられもする。

 

ホント、大事なことはいつも、

当事者である患者さんたちから教えてもらっているのだ。

 

 表紙    押川チラシ