危険ドラッグ乱用防止

神奈川県による危険ドラッグの乱用防止を啓発する動画が、

トラウマ級の恐ろしさだと話題になっている。

 

 

なかなか攻めているな、神奈川県。

子供が怖がるくらいで、ちょうど良いと思う。

 

俺もこれまでに、違法薬物に手を出した人間をたくさん見てきたが、

みんな、やっている最中は快感のほうが強くて、

精神的・肉体的に、元気になったような錯覚を起こす、と言う。

 

しかしだんだん、だるさや落ち込みなどの症状が出てくるから、

気分を上げるために、さらに薬物を摂取するしかなくなる。

 

「やめようと思えば、やめられると思った」

「やめれば、元通りの生活に戻れると思った」

これも、彼らがよく言うセリフだが、現実はそんなに甘くない。

 

俺が携わってきた中には、覚せい剤をやめてから5年以上が経っても、

うつ状態から抜け出せずに、通院をしている20代がいる。

歯がボロボロと抜け落ち、今さらながら後悔している30代がいる。

 

違法薬物はやめられても、かわりに向精神薬や、

アルコールに依存するようになってしまうこともあるし、

晩年になって、統合失調症のような症状が出ることもある。

 

原因不明の突然死を迎えるケースも、いくつか見てきた。

 

中には、何事もなく日常生活に戻れるひともいるのだろうが

そういうひとの話を鵜呑みにして、「俺も」「私も」と思うのは、

あまりに短絡的である。

 

ちなみに先日、このようなニュースも出ていた。

 

<薬物依存症>増えぬ治療拠点…精保センター、助成申請1割

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150829-00000008-mai-soci

 

依存症になってから、専門の治療を受けたいと思っても、

難しい現実があるのだ。

 

それに、アメリカのドラッグ(更生)への取り組みなどに比べると、

日本という国は、違法薬物に手を出した者に対して

「自己責任」「自業自得」という言葉で、突き放す傾向があるように思う。

 

これは文化の違い、民族性もあるのかもしれないけど、

少しさみしいことではあるな。

 

以前、TEDというスピーチフォーラムで、アメリカのジャーナリストが

「薬物中毒もスマホ依存も原因は同じ 多くの人が間違えている、

中毒者への正しい接し方とは」というスピーチを行っていた。

(詳細はこちらで読めます http://logmi.jp/83043

 

概要を大雑把に述べてしまうと

「罰則ではなく、ひとや社会とのつながりがないと

依存症からは立ち直れない」ということを言っている。

 

たしかに、俺が携わってきた若者を見ても、薬物を絶ったあとで、

本当の意味で立ち直り、自立できるようになったか否かは、

その後、どれだけいい人間とつながることができたか、にかかっている。

 

ちなみに、拙著「『子供を殺してください』という親たち」には、

薬物依存で苦しんだ対象者と家族のケースも掲載した。

精神保健の分野で、薬物の問題がどう扱われているかについても

述べているので、興味がある方はぜひお読みください。

 

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