親か子供のどちらかが必ず犯罪者に! 痛ましすぎる事件!!

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(以下引用:産経新聞 2014年6月15日)

 

警察相談でも解消されなかった父親の悩み…暴れる息子をこの手で殺害

 

息子の家庭内暴力に悩んだ父親は、自らの手で息子の命を奪った。

三男を刃物で刺して殺害したとして、東京都八王子市の会社員、石井正郎容疑者(64)が6月7日、警視庁に殺人容疑で逮捕された。

警視庁に再三、家庭内暴力の相談に訪れ、事件前日にも110番通報して三男からの暴力を訴え出ていた石井容疑者。

なぜ、殺人という最低・最悪の手段を選ばなければいけなかったのか。(荒船清太)

 

■「入院させられないか」 希望かなわず就寝中に…

「息子を刺した」。7日午前9時55分ごろ、警視庁南大沢署に石井容疑者が1人で訪れ、こう伝えた。

同署員が八王子市南大沢にある自宅に駆けつけたところ、1階和室の布団の上で、三男の博基さん(28)が胸に包丁が刺さった状態で死亡しているのが見つかった。

石井容疑者は殺人容疑で逮捕され、「三男の家庭内暴力に悩んでいた」と話したという。

南大沢署にとっても、博基さんの家庭内暴力問題は初耳ではなかった。石井容疑者は昨年7月に初めて同署を訪れ、「息子が大声で暴れる」と相談。殺害3日前の6月4日と前日の6日の夜にも110番通報し、5日には同署で改めて相談を持ちかけていた。

6日の通報後には、同署の地域課員3人が自宅を訪れ、石井容疑者は「入院させることはできないか」と相談したが、博基さんが落ち着きを取り戻したため、課員らは強制入院は困難と判断。「また何かあったら通報してください」と伝えて立ち去った。石井容疑者が台所から包丁を取り出し、和室で寝ていた博基さんの胸に突き刺したのは、この数時間後とみられる。

石井容疑者は博基さんと長女、妻の4人暮らし。殺害時、妻と長女も自宅にいたという。

 

■「警察呼ぶなら呼べよ!」エスカレートした暴力

博基さんは精神科に通院しており、5月ごろから暴力がエスカレートしたとみられる。近隣住民によると、自宅から男女の叫び声や罵声、物を床に投げつけるような音、昼間から階段を転げ落ちるような音が頻繁に聞こえるようになったという。

5月中旬には、自宅前でバイクにまたがった博基さんが石井容疑者に写真を撮影させ、撮り方が気に入らないなどと言って、石井容疑者に暴行を加える様子が目撃されていた。

さらに、殺害数日前の午後、「近所に迷惑だから」となだめる母親とみられる女性に向かい、博基さんがこう叫んでいたという。

「誰が悪いんだよ! 謝れよ! 警察、呼ぶなら呼べよ!」

 

■防げなかったのか…警視庁も経緯を調査

悲劇を防ぐことはできなかったのか。再三、警視庁に相談していた石井容疑者だが、被害届を出すことはなかった。

警視庁幹部は「実際に暴力が確認されたなら、警察として保護することもできた。精神的な病気があるならば、家族を説得して強制入院させることもできたはずだ」と指摘。警察署の相談事案を管轄する生活安全相談センターや、精神障害者などの保護事案を担当する生活安全総務課が詳しい経緯を調べている。

ただ、昨年発足したストーカー・DV(ドメスティック・バイオレンス)対策本部は配偶者など男女間の暴力が専門で、成人した親子間の家庭内暴力を直接担当する部署はない。

別の警視庁幹部は「家族の被害は重傷とはいえず、被害届が出ていない以上、暴行事件として立件するのも難しい。精神科に通院しているといってもアルバイトをしており、強制入院も困難だったとみられる。両親や長女が別居するなどの対応はあっただろうが、警察としての対応は限られていた」と分析している。

 

■繰り返される子殺し 「殺人は許されない」

家庭内暴力に悩む親が子供を殺害してしまう事件は、これまでにも繰り返されてきた。

平成17年には、長男=同(16)=を殺害したとして狛江市の母親が殺人容疑で逮捕、起訴され、東京地裁八王子支部は「同情の余地はあるが、あまりにも短絡的かつ身勝手な犯行」として懲役6年の判決を言い渡している。

精神科医で筑波大医学医療系の斎藤環教授は「家庭内暴力は今も親が世間体を気にしたり、本人の報復を恐れたりして隠す傾向が強い。親が専門家と相談し、言葉での訴えは認めても暴力は拒絶する姿勢をはっきり示すことが大事だが、それができずに殺人事件に発展してしまうことがある」と指摘する。

近隣住民によると、石井容疑者は温厚な人柄で知られ、地域の掃除にも積極的に参加していた。一方で、「きまじめで口数が少なく、周りとあまり会話は交わさなかった」という人もいた。

斎藤教授は「周りにきちんとアドバイスできる専門家がいなかったのは不幸だが、親としてできることはまだあり、殺人は許されない。博基さんの殺害は避けられた事態で、同情を禁じ得ない」としている。

 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140615-00000522-san-soci

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毎度のことであるが、こういった事件が起きるたびに、警察の対応が引き合いに出される。

その一方で、行政の相談機関である保健所や精神保健福祉センター、

そして医療機関の対応については、一切触れられない。

マスコミの人間が勉強不足で仕組みを知らないのか、何らかの政治的圧力がかかっているのか分からないが、

これこそが、こういった問題がなくならない一因ではないかと、俺はいつも思う。

 

そもそも警察に、対象者を強制入院(正しくは措置入院)させる権限はない。

あるのは、「警察官による通報」(精神保健福祉法第23条)だけだ。

 

この「警察官による通報」が行われると、まずは保健師が本人と面談をし、

そこで保健師が精神保健指定医の診察が必要だと判断した場合には、

二名以上の指定医が呼ばれ、診察を受けることになる。

そして各指定医の診断が措置入院に該当すると一致した場合、

都道府県知事または政令指定都市の市長が、精神科病院等に入院させることになる。

 

上記のように措置入院に至るまでのハードルは高い。

よって警察官も、対象者が「警察官が到着しても暴れているような」、

よほどのレベルでない限り、警察官通報を躊躇してしまう。

 

今回の件も、報道から見る限り、本人には一定の社会性があったようだし、

措置入院に至るレベルではないと判断されたのだろう。

 

斎藤環氏の「家庭内暴力は今も親が世間体を気にしたり、本人の報復を恐れたりして隠す傾向が強い。

親が専門家と相談し、言葉での訴えは認めても暴力は拒絶する姿勢をはっきり示すことが大事だが、

それができずに殺人事件に発展してしまうことがある」というコメントは、正論ではあるが、現実的ではない。

 

俺の感覚から言えば、今時、こういった問題を誰にも相談しない親(家族)のほうが、珍しい。

今の親たちは、ありとあらゆる専門機関に相談に行っている。

 

警察にも何度も通報していることから、

親は本人に対して、暴力を拒絶する姿勢を示そうとしていたことは明白である。

 

おそらく親は、保健所など行政の専門機関にも相談に行っていただろうし、

本人が精神科に通院していたという記述もあることから、医療機関にも相談していたはずだ。

本来であれば、本人に関わる「心」の専門家たちが、危機的状況を見抜き、

親と協力して、一時的でも入院をさせるといった対応がとれたはずである。

 

しかし現状では、保健所も医療機関も、このような、家庭内暴力を伴う対応困難なケースには、介入しない。

介入しないどころか、拒否するのである。

 

なぜならこういった患者の多くが、パーソナリティ障害と診断されているが、

家庭環境や親の育て方、もともとの性格の歪みなども影響しているため、

ようするに薬が効かない、治療効果がない患者とみなされ、「ノーサンキュー」なのだ。

 

保健所など当該行政機関と医療機関は、診察や治療を行う前から、

こういったケースの患者に対して、判断を下しているとも言える。

もっと突っ込んで言ってしまえば、親か子のどちらかを犯罪者にするための審判を下しているのだ。

それこそ、今回の事件のように。

 

精神科医療において、こういった問題の総数は、

全体からみれば、ほんのわずかだろう? という反論も、あるかもしれない。

 

だけど俺に言わせれば、そもそもこの手の患者は、医療にかかること自体、難しい。

(なんたって、保健所や医療機関が「ノーサンキュー」なのだから)

正確な数字など把握できる術もなく、俺の感覚で言えば、

とくに中流家庭において、膨大な数、存在しているのである。

 

日本の精神科医療の現状を変えていかない限り、

こういった事件は増える一方だろう。

 

それにしても! 俺のところに相談に来てくれていれば、

親父に息子を殺させるような、そんな悲しいことはさせずにすんだ。

これも、いつも思うことである。