患者の家族の金持ち化

少し前に、患者の高学歴化という記事を書いたが、

もう一つ、精神疾患の疑いがありながら、なかなか医療につながらない要因として、

家族(親)の「金持ち化」が挙げられる。

 

対象者(この場合は子供)は、無就労やひきもりの状態にあり、

不規則な生活や病質的な言動、自宅のゴミ屋敷化、

アルコールや薬物への依存、隣人とのトラブルなど、

精神疾患ではないか? と思われる言動を繰り返している。

 

一方で、実家(持ち家)に住み、親から小遣いを与えられているため、

生活自体は成り立っているし、買い物や外食などの外出もできている。

だからこそ、「医療や福祉の助けが必要なレベル」と見なされず、

親がいくらかけあっても、行政機関や医療機関の介入・協力が得られない。

 

本人にしても、生活に困っているという実感もないから、

病識を持つことが、ますます難しい。

こういう対象者を入院治療、ましてや自立にまで結びつけることが、

いかに難しいかは、説明しなくてもお分かりになるだろう。

 

先に「金持ち化」と書いたが、これが、生まれてこのかた、

金なんか数えたこともないような本物の大金持ちなら、

おそらく解決方法はあるのではないかと思う。

嫌な話であるが、金さえあれば何とかなることは、世の中にたくさんあるからだ。

 

だが、そのレベルの金持ちは、割合でいえばとても少なく、

その他の多くは、金持ちは金持ちでも「小金持ち」といったところだ。

しかしこの「小金持ち」の家庭の親ほど、

本業以外の経済活動(錬金術)がお盛んなのである。

 

ここ十年ほどは、本人の兄弟姉妹からの依頼も増えているのだが、

親の経済活動については、彼らにもまったく知らされていない。

俺が指摘して初めて、彼らなりに調べてみて、

親のなんだかよく分からない錬金術に気づき、呆気にとられることになる。

 

これが、子供たちの将来を見据えての投資活動であるなら、まだ理解できるのだが、

現実には、第三者の俺が見ても、親が自分のことしか考えていないのが、よく分かる。

 

それどころか、万が一、親が急死でもしたときには、

相続に関して、本人と他の子供たちの間での諍いは避けられず

それこそ殺傷事件に至るんじゃないか……と思うほどの杜撰さなのだ。

 

もちろん、経済社会に生きる以上、

「資産を増やしたい」という意思はあって当然だ。

ただ、まっとうな投資なら投資で、こそこそ隠したりせず、

「金とはこう稼ぐんだ」という姿を、子供に見せればいいじゃないか、と思う。

 

ところがこういう親ほど、子供には「金がない、ない」と言って育て、

金の稼ぎ方や、現金を見せるような生活もしていない。

 

その一方で、親自身の見栄や満足、安心感のために、

家や土地、車などの資産は、けっこうなものを持ち、

なおかつ親の都合で、名義には子供の名前を勝手に使っていたりする。

 

子供にしてみれば、住む家や車はあり、親の亡き後は、

それらが自分のものになるのだろうと、漠然と考えているフシがある。

(だから働かなくてもいい、という理屈である)

 

現実には、相続の問題も絡んでくるし、

その資産がいつまでも効力を持つとは限らない。

しかし本人は、金の稼ぎ方や動かし方など、

金にまつわる帝王学は親から受け継いでいないから、

ただ幻想のように、何とかなる、と考えている。

 

仮に少しでも生活が脅かされるようなことがあれば、

親への暴力や暴言で金を脅し取ったり、

病状が悪化したりして、問題行動として表出する。

 

こういう家庭の現状を目にするたび、

いっそ、親が金も家も土地も、何も持っていなかったら

子供もこころの病気になんかならず、問題も起きなかったのではないか?

ということを、考えてしまう。

 

たしかに、金にはこころを豊かにする側面もあるが、

帝王学を伴わない金は、ただ無用な諍いやトラブルを生むだけだ。