〈大阪中1遺棄〉 他人事ではない!

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(以下引用:読売新聞 2015年8月22日)

 

山田容疑者、過去にも少年に声かけて車に監禁

 

大阪府警に死体遺棄容疑で逮捕された山田容疑者は過去に、中学生らに声をかけて車に監禁する事件を起こしていた。

 

2002年3月、大阪府寝屋川市香里南之町(こおりみなみのちょう)の路上で、中学2年の男子生徒に「寝屋川市駅に行きたい。車に乗って案内してほしい」と声をかけて車に乗せ、「おれは警察や。持ち物を調べる」と脅迫。生徒の両手に手錠をかけ、1500円と携帯電話を奪ったとして強盗、逮捕監禁などの容疑で大阪府警に逮捕された。

 

ほかにも同月、寝屋川市内で少年2人を車内に監禁、粘着テープで縛って連れ回すなどしたとして、再逮捕されていた。

 

http://www.yomiuri.co.jp/national/20150822-OYT1T50059.html

 

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大阪・高槻の事件は、かわいそうな結末になってしまった。

 

子供たちが深夜に出歩いていたことから、親子を批難する向きもあり、

そしてそれは、正論でもあるのだが、おそらく親子の誰もが、

「こんなことになるとは思っていなかった」のではないだろうか。

 

思いがけず恐怖に遭遇してしまった二人のことを思うと、哀しい。

今はただ、ご冥福をお祈りするばかりだ。

 

なお、容疑者の男は、13年前にも少年に対する強盗・逮捕監禁事件を起こしていた。

同様の事件をほかにも起こし、再逮捕もされていたという。

 

本人も、おそらく家族も、その異常性には気づいていたのだろうが、

残念ながら、今の日本では、本人が真摯に自分の行為と向き合わない限り、

この手の再犯を防止する手立てはない。

 

13年前の事件では、中学生男子に声をかけ、現金や携帯電話を奪い、

粘着テープで両手を縛った上で、駐車場に放置した。

今回の事件では、同じような手口をつかいながらもいっそう悪質になり、

殺人という最悪の結果に至っている。

 

司法で処罰するだけでは、再犯の可能性は否定できない、ということだろう。

 

容疑者の動機や、事件に至る詳細な経緯は、まだ分かっていない。

 

俺は、容疑者のフェイスブックも見たのだが、

友達もいるし、書いてあることも普通で、メシや街の写真などをアップしている。

ぱっと見ただけでは、ごく「普通」そのものだ。

 

ただし、犯行があったとされる13日以降も、

何事もなかったかのように、記事を更新しているあたり、

計画性もなく衝動的に人を殺めた、愉快犯のようでもある。

 

未成年をターゲットにした事件を繰り返していることから、

いわゆる性癖の問題も、あったのかもしれない。

 

常習性のある窃盗(職業的窃盗犯、反社会的集団としての窃盗犯などは除く)や、

性癖による事件を起こした場合には、

仮になんらかの病名はついても、責任能力は否定されず、刑事罰を受けることが多い。

一方で、刑罰で処遇されても、再犯率が高いことが、特徴でもある。

 

軽度の犯罪(もちろん被害者にとっては、軽も重もないのだが)の段階で、

加害者に対して、内面の支援をいかにして行っていくか。

たとえば、本人が内省を深め、考え方や行動を改めるための、

心理教育的アプローチや、医療的側面からの支援などがない限り、

この手の事件の再犯防止は、難しいのではないかと思う。

 

これは、ストーカー事件への対応と、本質は同じである。

実際に今は、執拗にストーカー行為を繰り返してしまう加害者に対して、

規制や警告を行うだけでは、再犯を防ぐことができず、

医学的・心理学的治療を施していこうという取り組みが、広がりつつある。

 

とはいえ、どんなに支援を行っても、このような事件を起こす人間はいるわけで、

殺人事件を「ゼロ」にすることは、残念ながらできない。

 

だからこそ、我々一般市民には、巻き込まれないためにどうするか、

巻き込まれそうになったときに、どう対応するか、という備えが求められる。

 

何度も言ってきたことだが、事件を他人事と思ってはいけない。

危険は、身近なところにも潜んでいる。

 

俺のところには、精神疾患の有無に関わらず、

対象者の違法行為に関する相談もある。

中には、ストーカーや、強姦・覗きなど性犯罪に関するものもある。

 

異常性の片鱗が見えていればまだしも、

いい会社に勤めていて、話しぶりもソフトで、妻子もいて、

誰もが「いいひと」「まともなひと」と思うような人物が

裏では他の女性に乱暴狼藉をはたらき、

強姦まがいの行為を繰り返していたようなケースも、あった。

 

本人の異常性に気づいていて、

事件を予防しなければと、頑張って動いている(加害者側の)家族もいるが、

危険性にまったく気づいていない家族もいる。

対応に疲れ果て、「いっそ死んでくれたらいいのに……」と、

悲観的に傍観しているだけの家族もいる。

 

「自分たち家族に危害を加えられるくらいなら、

外で事件を起こして、刑務所に入ってくれたらいいのに」

と思っているような家族さえいる。

 

これが現実なのだ。

 

俺たちの世代はとくに、「日本は豊かないい国だ」「安全だ」

「民度も高い」「社会保障も充実していて、住みやすい」……

というような、いいことばかりを徹底して刷り込まれてきた。

 

だけど現実は、そんなに豊かでも安全でもないし、

いざってときに行政の手厚い支援を受けられるかといえば、

どこもかしこも、人手や財政の不足を訴えている。

 

結果、難しい問題ほど、「個人」や「家族」の責任とされる。

 

その反面、今の時代は、「個の自由」が最大に尊重されている。

SNSを通じた不特定多数の人間との交流、情報ツールの利用等を、

止めたり制限したりすることは、もはや難しい。

 

親が過保護になりすぎて、子供の自由を奪い、

大事に籠に入れっぱなしにするやり方では、別の弊害も出てくるだろう。

 

俺は長年、家族の問題と、それに対する行政(国)の対応の流れを見てきたが、

これから先はますます、他力本願ではなく、

自分自身で問題解決をする力が必要となってくると、感じている。

 

一歩間違えば、犯罪や事件に巻き込まれる世の中だ。

自由、自由というが、そこには自己責任が伴う。

そういった現実を子供に教え、どう考え、行動していくべきか、

日頃から親子でよく話し合っておかねばなるまい。

 

100%の安全などはどこにもないが、少なくとも、

犯罪や事件に巻き込まれる可能性を低くすることは、できる。

 

夏休みも残り少なくなり、今週末は、

各地で最後の花火大会なども行われるようだ。

 

子供たちが、羽目を外しすぎないよう、

親御さんたちにはしっかり、見守っていてほしいと

こころから願うばかりだ。