家族の崩壊と解体

家庭内暴力やネグレクト、一家離散など、

様々な事柄を要因として社会一般的な体をなしていない家庭を表すのに、

【家庭崩壊(家族崩壊)】という言葉がある。

 

しかし俺の頭に最近、思い浮かんでいるのは、

【家族解体】という言葉である。

 

【崩壊】というのは、俺の経験からくる理屈で言うと、

家族の関係がこじれきって、親殺し子殺しにまで発展したような、

もうどうにもならない、一生一緒には暮らせない、会うこともできない。

そういう家族を指しているように思う。

 

一方【解体】というのは、崩壊する前に、自ら解散しちゃっている家族である。

 

【崩壊】であれば、ある意味、事件になってしまっているので、

司法にしろ医療にしろ、何らかのかたちで介入せざるをえない。

一方で【解体】は、家族(親)が望んで選択していることなので、

行政も容易に介入ができない。そこもまた、大きな違いだ。

 

たとえば、佐世保の女子高生殺害事件もそうである。

加害者の少女の父親は、完全な家庭崩壊が起きる前に、

娘を一人暮らしさせるという形で、手を離した。

つまり望んで、家族を【解体】したのである。

結果、娘の衝動は罪のない第三者に向かった。

 

俺のところにくる相談でも、この手の家族が、とても増えている。

 

佐世保のように、家庭内暴力の子供に手を焼き、

本人を一人残して、親が逃げているケースもある。

 

子供が事件や事故を起こし、第三者に迷惑をかけているのに、

何も対応をとらず、知らぬ振りを決め込んでいる親もいる。

 

あるいは、子供が家出をして見知らぬ他人の家に住み着いているのに、

取り戻そうともせず、放置している親もいる。

 

最近は、その“子供”が、まだ10代であるケースも、とても多い。

未成年だからこそ、親としてできることはまだあるはずだ! と思えてならない。

本気で、真剣に取り組んだら、行政だって動かざるをえないはずなのに。

怒りを通り越して、俺は悲しいぞ。

 

しかし、俺が親にそういったアドバイスをすると、

「私たちにも生活がある。子供のためだけに時間やお金を使うわけにはいかない」

「自宅に連れ戻したところで、子供は嫌がるし、私もどうしていいか分からない」

などという返事が返ってくる。

 

自分たちの身にヤバイことが起きて崩壊するくらいなら、と、子供を放置……

つまり親自身が、【家族解体】の選択をしているのだ。

 

俺にはそんな風に見える。

 

この【解体】は、表面的に見えないところでも、起きていると思う。

 

一つ屋根の下にいながら、会話すらない家族。

表向きは仲良く見えても、大事なことは何一つ話し合えない家族。

金や物など、物質的なつながりしかない家族。

 

精神疾患に苦しむ子供を放置する家族、子供の犯罪を見て見ぬ振りする家族も、

結局は【解体】してしまっているのだ。

 

家族がいながら、何らかの事情があり、一人暮らしをせざるを得ない老人も、

【解体】の産物なのかもしれない。

 

この間の孤独の話にも通じることだけど、

【家族解体】から生まれるのは、それこそ孤独であり、寂しさだけだ。

 

家族が解体した以上、子供たちは生きる場所がないから、

見知らぬ人の家に上がり込むのである。

「寂しい」に答えて優しくしてくれるひとがいたら、身体でも金でも差し出してしまう。

その結果、タチの悪い異性にそそのかされて転落の道を歩んだり、

最悪の場合、愛媛県伊予市の少女暴行死のように、命すら奪われる。

 

若いひとや孤独な老人であれば、生きる場所を求めることが、

怪しいネットワークビジネスやセミナーという集団につながることもある。

オウム真理教への入信者が、近年また増えているというように、

カルト宗教に傾倒してしまっているひとも、水面下ではけっこういるような気がする。

 

その根底にあるのは、【家族解体】だ。

 

今や、簡単に結婚して、子供を産んで、簡単に離婚する。

それも「しょーがないよね」「よくあることだよね」で済ませてしまえる時代になったが、

本当にそれでいいのだろうか。

 

壊そうとしても壊れない。壊したくても壊せない。

そういう強い家族を取り戻す土壌をつくっていかない限り、

いくら少子化対策を打ち出したところで、意味がないと思う。

 

俺としては、ハードな子供の問題を抱える家族に対して、

早い段階で積極的に介入し、現実的な問題解決に結びつけるスペシャリスト集団を、

国をあげて作らせることが、安心して子供が産める、子育てができる一つの土壌になると思っている。

 

俺は俺なりに、自分のすべきことを達成するために、頑張るつもりだ。

 

このブログを読んでくれているひとたちも、一人一人が、

【解体されない】強い家族について考えてみてくれたら……

今日も長ったらしい文章を書いた甲斐があるってもんだぜ!